地球と人にやさしい服の選び方

このプログラムは、「株式会社トンボ」のプログラムを基にしています。

● プログラムの目標身近な綿製品の消費が引き起こす生産時の環境問題、社会問題を知り、環境負荷の少ないオーガニックコットンの存在を学び、調査を通して消費のあり方を見直し、消費行動を変えることを狙いとする。
また、調査、意見交換をもとに行動計画を立て、実行し、振り返りをすることで、PDCAのサイクルを学ぶと共にまとめや発表によりコミュニケーション力を身に付ける。
● プログラムの概要衣料や日用品として1日たりとも欠かすことの出来ない身近な素材「綿」、一方その生産、加工における問題点については知る機会が殆どない。この綿に焦点を当て、意見交換、調査、体験、学習を通して、消費のあり方を考え、環境問題や社会問題を認識し、自分で出来る改善策を考え、行動し、振り返りを行うプログラム。かつて全ての綿はオーガニックコットンであり、無農薬で栽培されていた。経済拡大により、収量増加のために化学肥料や農薬等による栽培で収量は増え、消費者は便利になったものの、環境問題や生産者の社会問題が発生する結果となっている。この綿をテーマにして消費活動のあり方を見直すプログラムである。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
中学校1~3年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。
中学校1~3年技術・家庭(家庭分野)2 C 消費生活・環境
(2)消費者の権利と責任
ア 消費者の基本的な権利と責任,自分や家族の消費生活が環境や社会に及ぼす影響について理解すること。
イ 身近な消費生活について,自立した消費者としての責任ある消費行動を考え,工夫すること。

2 C 消費生活・環境
(3) 消費生活・環境についての課題と実践
ア 自分や家族の消費生活の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けて環境に配慮した消費生活を考え,計画を立てて実践できること。
中学校3年社会(公民的分野)2 D 私たちと国際社会の諸課題 
(2)よりよい社会を目指して
持続可能な社会を形成することに向けて,社会的な見方・考え方を働かせ,課題を探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を多面的・多角的に考察,構想し,自分の考えを説明,論述すること。

● SDGsの要素

綿花栽培時の農薬使用による健康問題や児童労働等の社会問題を知る。
収量増加のために消費者は便利になったものの,環境や社会の問題により生産者との不平等が生じていることに気づく。
環境負荷の少ないオーガニックコットンの存在を学び,消費の在り方を見直すきっかけにする。

● ESDの要素

綿花栽培が生産地へ与える影響を知るとともに,自分たちが消費している衣類と関連づけて考える。
自分たちの生活を改善する必要があることを意識し,自らアクションを起こす。
糸を紡ぐ工程見学や糸紡ぎ体験などを通じて外部講師と関わったり,生徒間で情報交換をしたりしながら課題を深く捉える。

● ESDの能力・態度

綿製品が引き起こす環境負荷や健康問題,児童労働等の社会問題を知り,自分の消費行動を内省する。
主体的に調べたい課題を選択し,グループで協力して調べ学習や聞き取り調査を行う。
課題解決のために自分たちにできる行動を考えて計画を立て,外部に与えた影響や反応,気持ちの変化等をふり返る。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

8時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目(1/
2)
①-1服を買う時どんなことに注意する?
①-2綿はなぜいろいろなものに使われるのだろう?

1)服を買う時一番気になることを考え発表する
2)服にはどんな繊維がつかわれているか考える
3)服以外で身近な繊維は何か考える。
1)服を買う時一番気になることを考え発表する
・服の購入基準について意見を出させ、自分なりの優先順位を決定させる。
2)服にはどんな繊維がつかわれているか考える
・どのような繊維で服が作られているか意見交換させ、繊維の種類を認識させる。
3)服以外で身近な繊維は何か考える。
・服以外の日用品に使われている繊維を考えさせ、綿を
クローズアップさせる。
1時間目(2/2)
1.綿の良い性質について考える。
2.綿はどこで採れる(栽培されている)か考える。
綿の吸水性や耐久性などの機能と栽培し易さ、加工し易さによる生産量の多さに基づく多用途利用に気づかせる=綿の良さを実感させる。
2時間目②-1綿のことをもっと良く知ろう (体験学習)

から綿となり糸を紡ぐ工程を見る。
綿から実際に糸にする糸紡ぎを体験する。

<外部講師指導1>
綿花について外部講師より学ぶ
・実綿から糸紡ぎまでの実演を見させる
・スピンドルを使った糸紡ぎを体験させる 
〔スピンドル、実綿〕
3時間目②-2綿のことをもっと良く知ろう (生産地の問題)
綿花の生産について学ぶ
・綿花栽培時の環境負荷や農薬使用による健康問題、自殺、児童労働等の社会問題を学ぶ。
・この時間で前時のような課題や被害を解消する方法として、オーガニックコットンがあることを学ぶ。
<外部講師指導2>
綿花栽培における環境問題や児童労働などの社会問題を認識させる。
4・5・6時間目③問題点を話し合い、もっと深く知ろう(調査活動)
④互いに情報交換しよう(情報共有)
・気になったことやびっくりしたことを話し合う。
・興味ある課題でグループを作り、調査内容を考え、実施する。
・調べたことをお互いに発表して情報交換する。
・グループ調査テーマ
この時間で、前時までの学習を基に自分がもっと調べたい課題を選択させ、調べ学習や聞き取り調査を行わせる。
選択肢は1,2,3以外でも調べたいものがあれば進めさせる。
 1児童労働
 2オーガニックコットン販売調査(店、インターネット)
 3オーガニックコットン意識調査(クラス、家庭)
7時間目⑤課題を解決するために何か自分たちにできるアクションを起こしてみよう
・自分たちができる行動を考え計画を立てる。
・互いに発表する。
・前時の調査結果を共有した後、学んだことを生かしてこれからの生活の中で自分ができるアクションを考えさせる。
・個人若しくはグループで取り組む内容をクラスで共有させる。
8時間目⑥行動してどうだった?
・やってみて変わったことや変わったと感じることをふり返り反省する。
・反省をもとに次の行動や学びに生かす。
・行動開始後一定期間をおいて、その活動が外部に与えた影響や外部の反応・変化、自分自身の気持ちの変化等についてふり返りをさせ、行動により周囲への影響があることを認識させる。

● その後の展開例等

  • カーディング(綿をほぐす作業)や糸紡ぎのための綿を学校で自ら栽培することも可能。
  • 綿花栽培を取り入れる場合は、学習指導要領の内容から技術・家庭の時間で行うことが可能。