環境ウォッチングで提案づくり
このプログラムは、「公益財団法人 公害地域再生センター(あおぞら財団)」のプログラムを基にしています。
● プログラムの目標 | ・地域環境の多様な課題を見つけ、その課題を整理し、課題の仕組みや解決策を考える力を養う。また、解決策を行政に提案することにより、自分達は地域の期待を担う存在であることを自覚する。 ・大人や子どもなど、学校以外の場所において、コミュニケーションをとる力を養うとともに、他者の考える課題や自分達の提案に対しての意見を広く聞くことで、社会と自分達とのつながりを知る。 ・友だちと協力して課題に取り組み、責任感を持ちながら課題を深くさぐり解決する力を養う。 |
● プログラムの概要 | 地域の環境問題は、できるだけ早期に解決することが期待される。問題の芽に気づき、どうしたら解決できるかを考え行動に移すことのできる人材を育てることが、持続可能な地域をつくる上で重要である。 そのためには、未来を担う子どもたちも、自分たちの目で地域環境の問題点に気づき、その問題に対して自分たちなりの行動に移していくことが大切である。 このプログラムでは、子どもたちが地域の環境の調査や住民へのインタビューを行うことによって環境問題を認識し、また、行政に環境改善の提案を行うことで「自分たちの環境は自分たちでよくする」という参加への意識を高めるものである。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校5〜6年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
小学校5年 | 社会 | 2 (5)我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ウ) 関係機関や地域の人々の様々な努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことを理解するとともに,公害から国土の環境や国民の健康な生活を守ることの大切さを理解すること。 |
小学校6年 | 社会 | 2 (1)我が国の政治の働きについて,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。 (ア) 日本国憲法の基本的な考え方に着目して,我が国の民主政治を捉え,日本国憲法が国民生活に果たす役割や,国会,内閣,裁判所と国民との関わりを考え,表現すること。 (イ) 政策の内容や計画から実施までの過程,法令や予算との関わりなどに着目して,国や地方公共団体の政治の取組を捉え,国民生活における政治の働きを考え,表現すること。 |
小学校5〜6年 | 道徳 | 2 A 主として自分自身に関すること [希望と勇気,努力と強い意志] より高い目標を立て,希望と勇気をもち,困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜くこと。 2 B 主として人との関わりに関すること [感謝] 日々の生活が家族や過去からの多くの人々の支え合いや助け合いで成り立っていることに感謝し,それに応えること。 2 C 主として集団や社会との関わりに関すること [よりよい学校生活,集団生活の充実] 先生や学校の人々を敬愛し,みんなで協力し合ってよりよい学級や学校をつくるとともに,様々な集団の中での自分の役割を自覚して集団生活の充実に努めること。 |
● SDGsの要素
地域住民の意見を聞いたり,行政に環境改善の提案を行ったりすることで,地域参画への意識を高める。 | |
地域の環境問題に気づき,持続可能な地域をつくるための解決方法を考え,行動する。 |
● ESDの要素
地域の課題ごとにグループを作り,環境調査の準備や実施,インタビュー,まとめ活動などを協力して行う。 | |
ごみ拾いや資源回収など,地域の環境への取り組みを知り,地域環境の多様な課題を見つける。 | |
行政に環境改善の提案を行うことで「自分たちの環境は自分たちでよくする」という意識を高める。 |
プログラム・単元・展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 地域のために活躍する人々を知ろう!(導入・任意) | |
○地域での環境まちづくりの実践活動を知り、なぜそのようなことをしているのか考える。 ○地域の環境を守るためには個人が問題意識を持って主体的にとりくむ必要があることを学ぶ。 | ◇地域で行われている環境まちづくりの取り組みを何点か紹介(市民、企業、商店、学校、NPO等)し、児童が理解しやすい写真を提示する。 (例:市民花壇・ゴミ拾い・資源回収・自然環境の調査や保全等) ◇なぜ人々はその活動をするのかを考えさせる。 ◇5年社会の「公害から国民の健康や生活環境を守ることの大切さ等」にふれ、地域の取り組みが関連づくよう、取り組む人の言葉や背景などを紹介しながら取り組む理由を提示する。〔環境まちづくりに取り組む人の様子がわかる写真〕 | |
2・3・4時間目 | 地域の課題を考えよう! | |
○住んでいる地域の環境に対し、良い所・悪い所をそれぞれシートにまとめ、発表する。 | ◇「地域の環境」とはどんなことか、どんな課題があるのか、 視点を提示しながら考えさせる。(自然、歴史、ゴミ問題、公害問題など。) ◇様々な気づきと地域の課題がわかるよう各自の発表の内容は黒板に書く。関連する意見を募り、黒板上にキーワードが見えるよう同じ意見をグルーピングしながら書き示す。(もしくは子どもの書いた紙を貼る) ◇テーマごとにグループを作り、それぞれの視点で地域の環境調査の準備をさせる。 ◇地域の人へのインタビューの心得などのアドバイスを行う。 ◇子ども達の意欲を高め、責任を自覚させる。 [良い所・悪い所を書くシート、調査グッズをつくる道具(ワッペンの紙やピン等)] | |
5・6時間目 | 地域の環境ウォッチング | |
○グループごとに決めたテーマで地域の環境を調査する。 ○テーマに沿って白地図に、良い所(人)や課題を記入し、写真で記録する。 | ◇安全に気を付けながら行う。 ◇事前に保護者や地域の方々に協力をお願いしておく。 ◇必要に応じて、関係者に話ができるようコーディネートする。 〔白地図・デジカメ・指さし棒・スケッチブック・筆記用具・まち歩き〕 | |
7・8時間目 | 結果を見つめ、課題と解決策を考えよう! | |
○模造紙に調査結果をまとめる。グループごとに、実際にまち歩きをした結果を整理する。 ○まちの課題をみつける。 ○課題に対する解決策をグループで考える。 | ◇模造紙のまとめ方(構成要素)を提示する。(地図、インタビュー結果、調査した結果、見つけた課題等) ◇問題点を整理するなど、話し合いの中で子どもが自ら意見を作り出せるようファシリテートする。 [模造紙、色マジック] | |
9・10時間目 | 調査結果と解決策の発表会 | |
○調査結果と考えた解決策を地域の関係者等の前で発表する。 ○発表に対する地域の人の意見も聞く。 | ◇他の人に伝わるようにするにはどうしたら良いのか、気づきと実行を促す。 ◇発表会には保護者や地域のゲスト(1コマ目で紹介した人等)を呼ぶ。 ◇地域の期待を担っていることを気づかせる。 | |
11・12時間目 | 町長(市長・区長)さんに提案しよう! | |
○前時の発表会で出た意見も参考に、町長さんへの提案を作る。 ○町長さんへの提案会を行う。提案を実現するためには様々な人々の努力が関係することを知る。 | ◇町長さんに直接会えないときには、「町長さんへの提案」として、手紙を書いて送るようにしてもよい。 |
その後の展開例等
プログラムの中で作成した模造紙や提案は、図書館等に展示し、広く地域の人が見る場をつくると、より児童のまちづくりへの参加の意識を高めることができる。また、地域の人々にこの取り組みを知らせることで、子どもたちから地域の人々へのメッセージを送ることができ、地域の人々の環境改善の意識の高まりにもつながることが期待できる。
● 地域で実践するときの補足情報
- 実施の為には、学校以外の団体・個人との協力が不可欠であり、教育と地域の為の授業という理解と共感を協力者から得ることが必要になる。その調整過程も地域と学校間とのつながりをつくり、地域の行動をつくるESDの活動といえる。
- あおぞら財団で大阪市域の団体(町会、企業、漁協、商店、公害患者、小中高校、大学、青少年活動、行政、図書館等)のコーディネートや環境ウォッチングの指導が可能。
- <参考資料・URL>
- 「都市に自然をとりもどす 市民参加ですすめる環境再生のまちづくり」編著:宗田好史、北元敏夫、神吉紀世子、あおぞら財団/発行:学芸出版社/2000.3
- 「かぶりとえころ爺のまち調べとマップづくり」編集/発行:(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)/2002.10
- 「西淀川の自然と歴史にふれあおう:もっと知りたいわたしたちのまち地域の宝・大野川緑陰道路」編集:大野川緑陰道 路の教材づくり研究会/2008)
- 西淀川菜の花プロジェクトブログ