日本に古くから伝わる赤ちゃんのお世話で美しい地球を救おう
● 目標 | ①紙おむつの素材や大量生産・大量消費されている紙おむつにかかわる自治体のごみ問題や工場や流通で生じるエネルギー問題を調べ未来を予測する。 ②赤ちゃんや育てる親の立場になり、おむつを多面的に捉える。また、古い浴衣やさらしから輪おむつをつくってみる。 ③美しい地球のために未来の自分たちが赤ちゃんをどう育てたいかを考える。 |
● 概要 | 赤ちゃんが生まれて初めて包まれるものである「おむつ」について考えながら、当たり前に使われている、大量消費の紙おむつのごみ問題やエネルギー問題について考え、身の回りの消費行動を見直す。実験や体験を通して生きる力を育み、未来を予測しながら相手を思いやり、古くから伝わる知恵や伝統文化を現代に生かしながら生命を尊重する心を育てることをねらいとする。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
中学校1年 | 技術・家庭(家庭分野) | 2 A 家族・家庭生活 (2)幼児の生活と家族 ア 次のような知識を身に付けること。 (ア) 幼児の発達と生活の特徴が分かり,子供が育つ環境としての家族の役割について理解すること。 (イ) 幼児にとっての遊びの意義や幼児との関わり方について理解すること。 イ 幼児とのよりよい関わり方について考え,工夫すること。 2 C 消費生活・環境 (2)消費者の権利と責任 ア 消費者の基本的な権利と責任,自分や家族の消費生活が環境や社会に及ぼす影響について理解すること。 イ 身近な消費生活について,自立した消費者としての責任ある消費行動を 考え,工夫すること。 |
中学校3年 | 社会(公民的分野) | 2 D 私たちと国際社会の諸課題 (2)よりよい社会を目指して 持続可能な社会を形成することに向けて,社会的な見方・考え方を働かせ,課題を探究する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を多面的・多角的に考察,構想し,自分の考えを説明,論述すること。 |
中学校3年 | 理科(第1分野)(第2分野) | 第1分野 2 (7)科学技術と人間 ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 ㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用 自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。 第2分野 2 (7)自然と人間 ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 ㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用 自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。 |
中学校1〜3年 | 道徳 | 2 D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること [感動,畏敬の念] 美しいものや気高いものに感動する心をもち,人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。 |
中学校1〜3年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
紙おむつのような大量消費・大量廃棄で成り立つ社会について話し合い,改善策を考える。 | |
自分や家族の消費生活が環境に与える影響について考え、解決策を検討する。 |
● ESDの要素
紙おむつのような大量消費・大量廃棄で成り立つ社会の発展には限界があることに気づき、身の回りの消費行動を見直すきっかけとなる。 | |
地球環境のために人権や生命を尊重し自然等からの恩恵を公平に享受するために、自分たちはどのように赤ちゃんを育てたいか考える力を培う。 | |
赤ちゃんの育て方を通し環境に配慮した消費生活を工夫し一人ひとりが責任あるビジョンを持って行動する自覚を促す。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
8時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 1.赤ちゃんと聞いて何をイメージする? 2.自分が赤ちゃんのときどんなおむつをしていたか知っている? 3.なぜ、紙おむつを使う人が多いの? | |
1.赤ちゃんのイメージについて話し合い、生まれて初めて包まれるものである「おむつ」について考える。 2.自分が赤ちゃんだったときどんなおむつをしていたかを確認する。(知らない生徒も多いことが予想される) 3.最近紙おむつを使う親が多い理由を考える。 | ◇様々なイメージの中から、生まれて初めて包まれるおむつに焦点を当てる。〔赤ちゃんの写真〕 ◇生徒に紙おむつのイメージを発表させ予想する紙おむつの利点などをあげてゆく。(母親にとって便利で赤ちゃんは快適などのポジティブな意見があがることが予想される) ◇自分がどのように育てられたか知らない生徒も多いので、次時までの宿題として親にどんな「おむつ」で育てられたか聞いてみる。子育ての苦労話も聞き、大切に育てられたことに気づき親に改めて感謝する気持ちをもつ機会とする。 | |
2時間目 | 1.多くの自治体はごみ問題で苦労しているけど、この数字の意味がわかるかな? 2.紙おむつは何からできているのだろう? | |
1.資料を提示し自治体のごみ問題について知り、その中に占める紙おむつの割合について考える。 | ◇〔自治体の可燃ごみ総量に対しての紙おむつの割合の資料.a〕 ◇紙おむつのごみ問題の資料を別途提供 ◇紙おむつの原料は何かの資料を用意 〔紙おむつの原料を示した資料.b〕 ◇当団体が集めたお母さん達の声のデータを別途提供可能。 〔お母さん達の声資料.c〕 | |
3時間目 | 1.紙おむつの無かった時代はどうしていたのだろう? 2.綿のおむつと紙おむつを比べよう | |
1.昔の赤ちゃんの「おむつ」について資料や実物から学ぶ。 布おむつを使った日本の伝統的な育児方法を学び、その良さについて考える。 2.実物に触れながら考える。 ・綿の特性を学び、綿素材のおむつと紙おむつを比較し、初めて包まれる素材としての在り方を考える。 | ◇〔戦前の「おむつ」についての資料.d〕 〔布おむつ、紙おむつ〕 ◇当団体より布おむつの扱いを楽にする「やり手水」(現代ではおむつなし育児と呼ばれる)についての資料提供可能。 dの資料に含まれる。 | |
4時間目 | 1.布おむつを作ってみよう | |
1.手縫いやミシンを用いた直線縫いで輪おむつを作る | ◇家庭にある古布(古い浴衣やさらし)等を用いてもよい。 ◇布おむつカバー製作に変更可。当団体京都サロンへ材料(古いウール着物等)提供依頼可能。 ◇当団体は授業進行シートを提供可能。 〔進行シート・資料.e〕 | |
5時間目 | 2.作った布おむつで赤ちゃんを包んでみよう。また、紙おむつと比べて感想を発表しよう。 | |
2.人形などを用いて出来上がった布おむつをつけてみる。 また、同じように紙おむつも着けてみて、比較しながらグループ内で意見交換し、出た意見を発表する。 | ◇〔赤ちゃんの人形〕 ※参考文献「布おむつで育ててみよう」(文芸社) | |
6時間目 | 1.布おむつと紙おむつのよい点と問題点をまとめてみよう。 2.赤ちゃんが大人になった時の地球環境を考えたとき、自分の赤ちゃんをどう育てたいか考えよう。 3.グループ内で互いの考えを発表し合いまとめたものをクラス全体で共有しよう。 | |
1.今までの授業を振り返り、それぞれのおむつの利点と課題をわかりやすく表にまとめる。 2.将来、赤ちゃんを迎えるとき、地球環境のために自分はどのように育てたいか考えまとめる。 3.グループで互いに自分の考えを発表し、意見交換を通して更に考えを深め、それをクラスで発表し、様々な考え方があることを共有する。 | ◇まとめやすいように、表になったワークシートを与える。 〔まとめのワークシート.f〕 【批判】【多面】 ◇どのような育児がよいと思うか考えるヒントとして、古くから伝わる生活の知恵や伝統文化を現代に生かすこともできるようアドバイスする。 ◇前時までの学習と家庭科で学んだことを基に、これからの生活で自分たちが出来ることを考えるように促す。 ◇「布おむつ」の他にも3Rで現代の生活にいかせるものを考えてみる。 【未来】 | |
7・8時間目 | 1.自分たちの思いを誰かに伝えよう。 2.グループごとに伝える内容と方法を考えまとめよう。 3.次の時間に発表。 | |
1.赤ちゃんの育て方で考えた事を、校内に限らず誰か伝えたい人に発信する。 2.赤ちゃんの育て方を含め、環境に配慮した消費生活について工夫し実践できることを話し合い、誰にそれを伝えたいか考える。 3.発表のための準備をする。 | ◇赤ちゃんの育て方に限らず、消費生活全般の暮らし方まで考えを広めてもよいことにする。 ◇次の時間に発表や提案を行う。 ◇内容によっては、自治体の環境政策担当者を訪問して報告しても良いし、保護者に聞いてもらう、学内用ポスターを作成して貼るなど考えられる。 |
● その後の展開例等
□赤ちゃんのおむつから発展させ、紙おむつとほぼ同じ成分を使用している生理用紙ナプキンについての言及も可能。
● 地域で実践するときの補足情報
□本プログラムは紙おむつを完全に批判するのではなく上手に活用することを提案する。
□講演会の開催、ワークショップの開催、資料のまとめなどに関して、連携、協力が可能。
□本プログラムは小学生を対象に開発したものを作り変えたものである。小学生対象に実施する場合は問い合わせに応じますので連絡を頂きたい。
□プログラム開発団体webページ おむつなし育児研究所 京都サロン
- 日本科学未来館夏の企画展関連イベントでの体験型展示にてプログラム実施予定(7月)
- 京エコロジーセンター(京都市)助成事業で小学生向けプログラム実施予定(8月)
- 世田谷トラスト財団助成事業で地域化し小学生向けプログラム実施予定(9月)