食べもののムダをなくそう
〜もったいない〜から学ぶ平和教育プログラム

このプログラムは、「ひろしまESD推進プログラム研究会」のプログラムを基にしています。

● 目標①「食(食品ロス)」というテーマから様々な課題を発見し(課題発見力)、私たちにできる解決方法(課題解決力)を学ぶこと、そして実践につなげていく。
②グローバルな視野から事象を掘り下げて行く力を身につける。
③「食」を通じ人間の根源的な営みを持続させる平和という総合的な気づきにつなげる。
● 概要滋くんのお弁当」をきっかけに、戦時中の食材と今のお弁当の食材の比較から、現代の「食」に焦点を当てる。そこから、「食」を中心にした様々な課題(食品ロスの問題や飢餓を引き起こす貧困や紛争など)のつながりに気付き、生徒が主体的に考え、調べることを通して、課題解決に向けて自分たちにできる行動にむすびつけていく。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
中学校1〜3年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。
中学校1〜3年技術・家庭(家庭分野)2 B 衣食住の生活
(7)衣食住の生活についての課題と実践 
ア 食生活,衣生活,住生活の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けてよりよい生活を考え,計画を立てて実践できること。

2 C 消費生活・環境
(3)消費生活・環境についての課題と実践
ア 自分や家族の消費生活の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けて環境に配慮した消費生活を考え,計画を立てて実践できること。
中学校3年社会(公民的分野)2 D 私たちと国際社会の諸課題
(1)世界平和と人類の福祉の増大対立と合意,効率と公正,協調,持続可能性などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 
ア 次のような知識を身に付けること。
(ア) 世界平和の実現と人類の福祉の増大のためには,国際協調の観点から,国家間の相互の主権の尊重と協力,各国民の相互理解と協力及び国際連合をはじめとする国際機構などの役割が大切であることを理解すること。その際,領土(領海,領空を含む。),国家主権,国際連合の働きなど基本的な事項について理解すること。
(イ) 地球環境,資源・エネルギー,貧困などの課題の解決のために経済的,技術的な協力などが大切であることを理解すること。
中学校3年道徳2 C 主として集団や社会との関わりに関すること
[国際理解,国際貢献]
世界の中の日本人としての自覚をもち,他国を尊重し,国際的視野に立って,世界の平和と人類の発展に寄与すること。

● SDGsの要素

世界の貧困問題を知り,食の不均衡な現状について解決策を考える。
食料が余っている国がある一方,飢餓に苦しむ国があることを知る。
「食」を通じて,食品ロスの問題や飢餓を引き起こす貧困や紛争など,人間の根源的な営みを持続させる平和に気づく。

● ESDの要素

人間の営みとしての「食」(「食品ロス」の問題)を通じて、「もったいない」という資源の有限性を学び、平和を尊重する態度を養う。
食料の有り余っている国がある一方で、飢餓に苦しむ国があることを知り、自然の恩恵を公平に配分する必要性を学ぶ。
食を通じ気づいた様々な課題について、自分の問題として取り組むことで、持続可能な社会づくりに対する責任を自覚していく。

● ESDの能力・態度

食品ロスの問題や世界の貧困問題を知り、食の不均衡な現状について批判的に考え解決策を考えようとする。
世界や日本の課題を自分事と捉え、どのように行動すれば平和で明るい未来が開けて行くのか自分なりに考えることができる。
食材の学習を通して、日本の課題が世界の課題につながっていることを知り、平和について多面的、総合的に考えることができる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

9時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目1 写真の弁当箱から何が分かる?
2 弁当を作った母親の思いを考えよう。
3 このような悲惨な状況を生み出した戦争について考えよう。
・黒焦げになった弁当の写真を見て分かることをあげる。
・黒焦げになった理由が原爆のためだと知り、当時の母親の思いについて考える。
・現在の自分たちの暮らしと対比しながら平和の大切さについて考える。
◇初めに写真から読み取れることを上げる。
〔滋君の弁当箱の写真〕
◇なぜこの写真が撮られたのか考えさせ、そのいきさつや時代背景、弁当を作った母親の思いにまで考えをめぐらせる。
〔被爆当時の広島の写真等〕
◇今と比べると貧しいながらも、充実した毎日を楽しく暮らしていた当時を知る。
◇平和の意味について深く考え、なぜ戦争が起きてしまったのかについても思いを馳せる。
〔当時の生活の様子を示した写真や日記〕
2時間目1 滋くんの弁当から、戦時の食事情を調べよう。
2 現在の弁当と比較しよう。
3 次に滋君の弁当を作ろう。

・写真から分からない食材は、資料で調べる。
・自分たちが食べている弁当の食材と比較して感じたことを発表する。
・弁当の食材を班内で分担する。

◇写真から当時の食材に目を向け、予想を立てたり資料を調べたりして当時の食生活を知る。
〔滋君の弁当の食材一覧等〕
◇現在の弁当の食材を書き出し、滋君の弁当の食材と比較し、どんなことが見えてくるか考え互いに意見交換する。
◇調理時間を短縮するため、家で調理した食材を班で持ち寄る。(各自弁当箱も用意する)
3時間目1 滋くんの弁当を作ってみよう。
2 現在の弁当との違いは?
3 現在の弁当の食材はどこからきているのだろう?
・実際に弁当箱につめてみる。(写真を撮る)
・弁当を味わいながら考える。
・現在の弁当の食材の産地を調べる。
◇当時の食を体験することが目的なので、調理した食材を持ち寄り弁当箱につめる。
〔弁当箱、滋君の弁当に必要な食材、デジカメ〕
◇互いに感想を述べ合い、自分たちの食べているものがいかに材料が豊富で恵まれているか実感する。
◇弁当の広告(写真)やスーパーのチラシを利用して使われている食材を書き出し産地をネットで調べる。
〔食材を輸入に頼っていることがわかる資料〕
4時間目1 日本の食料事情を知ろう。
2 食品ロスを知っている?
3 自分たちの食生活の中の「もったいない」を探そう。
・自給率や輸入に頼っている現状を調べる。
・むだに廃棄されている現状について学ぶ。
・自分の生活を改めて振り返り、食品ロス関係の「もったいない」を探し出す。
◇自給率が4割であることを知る。
〔インターネット、食料品輸入に関する資料〕
◇自給率が低いにもかかわらず、日本の食品ロスの半分400万トンは一般家庭のものであることを知る。
◇日本古来の「もったいない」という言葉の意味について触れる。 〔日本の食品ロスを示す資料〕
◇自分たちの食生活の中で「もったいない」と思うことがらをワークシートに記入し全体で共有する。
◇「食」という視点から私たちが大量生産・大量消費の生活にいかに染まってしまっているかに気づく。
〔ワークシート〕
5時間目1 世界の食糧事情はどうなっているのだろう?
2 食品が余っている一方で饑餓に苦しむ人がいるのはなぜだろう?
・諸外国の食料事情を調べる。
・世界の現状を知り、その原因について考える。
◇世界には貧困や飢餓で、1億人以上の人々が食で困っている現状を知る。
◇現在私たちが食べているものがどの国で作られたものであるか、食品の包装などをもとにしらべていく。
◇グローバルな視点から世界の状況はどうなのか、どうしてこのような現状になったの、「なぜだろう」を3回くらい考え話し合うことで、「原因」にまでさかのぼっていく。
6時間目1 「食」の視点から平和について考えよう。
2 「平和的な弁当」とはどんな弁当だろう?
・平和に対する一人ひとりの価値観を共有する。
・どんな弁当なら「平和的」と言えるか考える。
◇導入部で扱った「滋君の弁当箱」に立ち返り、過去と現在を対比する。「私たちを取り巻く現代の食事情は平和的か?」という問いについて考え意見交換する。 【批判】【多面】【未来】
◇今まで学習したすべての事柄を結びつけて考えるように促す。
◇食材を中心に考え、次の時間に持ち寄る食材の分担まで決める。 【未来】【協力】【参加】
7時間目1 「平和的な弁当」を自分たちで作ろう!
2 「平和的な弁当」を味わいながら平和について語ろう。
・班で持ち寄った材料を使って、調理する。(写真を撮る)
・みんなで弁当を食べながら自分たちの弁当を紹介する。
◇各班で話し合った「平和的な弁当」の食材を持ち寄り弁当を作る。(実習)
◇出来上がった弁当の写真を撮り後で紹介に使う。 【参加】【協力】
◇弁当を食べながら、各班ごとに自分たちの「平和的弁当」について発表する。(根拠をしっかり示す)
〔食材、デジカメ〕  【未来】【伝達】
8時間目1 私たちにできることは何だろう。
2 発表できるようにまとめよう。
・食の視点から見た平和な世界(社会)をつくっていくためにできることを考える。
・発表原稿を書く。
◇これまでのまとめとして学習の振り返りを行う。
◇平和的な食生活を営むために大切にしたいことや行動できることについて班で話し合いクラス全体で共有する。 【伝達】
◇各班で、自分たちの考えを発表できるように原稿を書いたりプレゼンの準備をしたりする。 【関連】【多面】【未来】
9時間目 お世話になった方や親に考えたことを発信しよう!
・自分たちの考えを外部に発信する。
・発表を聞いた人から感想を聞く。
◇この学習でお世話になった方や保護者に感謝の気持ちを込めて自分たちの考えを発表する。
◇外部に発信することで、考えたことに責任を持ち行動に移すよう促す。
◇発信した内容について、評価を生徒に返す。

● その後の展開例等

  • 身近な地域で平和的な食づくりに携わっている方(農家、製造、レストラン、カフェ等)と交流することで、キャリア教育につなげることができる。

● 地域で実践するときの補足情報

  • 1〜3時間目のプログラムは広島の平和記念資料館等で現地学習することができる。
  • 「滋君の弁当箱」等、平和学習用教材の情報・貸出について
      <参考>広島平和記念資料館
  • 日本の食糧自給率の情報について
    <参考>FOOD ACTION NIPPON