地域と共にごみを減らす意識を持ち続けよう!
「生ごみワーストワン脱出大作戦」
このプログラムは、 「横浜市立永田台小学校」のプログラムを基にしています。
● 目標 | ①家庭から出るごみの発生量が多いという課題があることを知り、地域の課題を自分事として捉えて解決に向けて取り組むことができる。 ②家庭や地域、行政の人と協力しつつ、ごみを減らす工夫や方法を考えて表現することができる。 ③ごみを減らす工夫や方法を実践し、その結果を相手意識をもって発信することができる。 ④地域の課題を解決する取組の価値を実感し、自己有用感や自尊感情を高め、自らが持続可能な社会への変化の担い手となる意志を育む。 |
● 概要 | ESDは、地域の課題も自分事、我々事、地球事として捉え、多くの主体と連携しながら解決へのプロセスを共に歩むことが大切である。 自分たちの住む地域が、生ごみを一番多く出していることを知り、ワーストワンから抜け出すために、まず、自分の身の回りにあるごみ問題を振り返り、解決に向けたアイデア集にまとめる。次に、多くの人と関わりながら、実際に試したり、行政に提言したり、校内や地域に伝えたりする。そして、この取組が生活に役立ち、ごみを減らし、温暖化防止にもつながることを知る。さらに、継続して取り組むことで、まち(地域)にごみ削減の意識を浸透させ、環境改善に取り組み続けるプログラムである。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
特別支援学校 小・中学部 特別支援学級 | 生活単元学習 | |
小学校4年 | 社会 | 2 (2)人々の健康や生活環境を支える事業について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 飲料水,電気,ガスを供給する事業は,安全で安定的に供給できるよう進められていることや,地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っていることを理解すること。 (イ) 廃棄物を処理する事業は,衛生的な処理や資源の有効利用ができるよう進められていることや,生活環境の維持と向上に役立っていることを理解すること。 |
● SDGsの要素
行政へ発信するなど,地域の課題を解決する取り組みを通じて,持続可能な社会への変化の担い手となる意志をもつ。 | |
ごみを減らすためのリサイクル・リユース方法を実際に行いながら,生活をよりよくする方法を話し合う。 | |
ごみを減らすことは,地球温暖化を防いだり将来の環境を守ったりすることを知る。 |
● ESDの要素
自分たちの活動を客観的に振り返り、お互いの生活をよりよくしていこうとする場があること。 | |
地域の課題を発見し、学校での学習に取り上げて、多くの主体と連携しながら体験を通して課題を解決すること。 | |
他人事だった生ごみ問題が、自分事として考えられるようになること。さらに、我々事、地球事として捉え、変化の担い手としての意識を高めること。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 「広報誌から課題みつけをしよう」(生活) | |
○自治体の広報誌から学ぶ。 ・リユース、リデュース、リサイクルについて学ぶ。 ・ごみを減らすことは、地球温暖化を防ぐのにも役立つことを知る。 | ◇自治体の燃やすごみ(生ごみ)の量を他地域と比較し、課題を見つける。 ◇家庭のごみで一番多いのは、生ごみだということに気付かせる。 ◇何でもごみにしてしまうことへの問題意識をもたせる。 ◇学校図書館の活用。(国語) | |
2~4時間目 | 「地域の人にも聞いて、アイデア集を作ろう」(生活) | |
○生ごみを減らすためのリサイクル・リユースごみ減量アイデア集を作る。 | ◇お願いの仕方を考えさせる。 ◇アンケート項目、アンケート協力者等を適切に設定する。子ども達がアンケートのお願いに行けるよう予め頼んでおく。 ◇野菜くずできんぴらを作ったり、茶殻で掃除するなど、いろいろな工夫をしていることを知り、本にして地域の人に配るとごみが減らせるのではないかと考える。 ◇夏休みを使ってアイデア集を印刷製本する。アイデア集を作ることが目的となってしまわないよう気をつける。 | |
5時間目 | 「アイデア集の中から実際に試してみよう」 | |
○子ども達ができる5つのアイデアを実際に試してみる。 ①生ごみ水切り体験をしてみよう! (重さ 算数) | ◇ペットボトルやCD等、あるものを使い、手が汚れないようにする。 ◇麦茶パック1個でも、水切りしたものと水切りしていないものでは重さが違うことを調べさせる。20グラムの差、15人だと300グラムも違う。 | |
6時間目 | 「アイデア集の中から実際に試してみよう」 | |
②ジャガイモ皮むきで比べてみよう! ・包丁、ピーラー、ゆでるの3つの方法でジャガイモの皮むきをする。(重さ 算数) (命の授業 生活) | ◇むき方によって生ごみの量が大きく違うことに気付く。 ア 包丁 ―50グラム イ ピーラー ―20グラム ウ ゆでてむく ―8グラム ◇外部講師の招へい ◇「命の授業」で、人間だけでなく動物や植物にも命があることを学ぶ。 | |
7時間目 | 「アイデア集の中から実際に試してみよう」 | |
③エコクッキングに挑戦!(生活) | ◇ジャガイモの皮や大根の皮を使ってきんぴら作りをする。 普段は捨てている野菜くずでも料理でき、おいしく食べることができる。先生方やお客様にも食べていただく。 | |
8時間目 | 「アイデア集の中から実際に試してみよう」 | |
④コーヒー脱臭剤を作ろう!(生活) | ◇コーヒーを入れた後のかすを、学校や家庭から集めてくるようにする。早めに集めて、十分乾かすようにする。 ◇給食で出たみかんの皮を捨てないでとっておく。 ◇クラスや廊下にコーヒーやみかんのいい香りが充満してくるので、全校からの関心が高まる。 | |
9時間目 | 「アイデア集の中から実際に試してみよう」 | |
⑤リユース楽器を作ってみんなで演奏しよう!(図工・音楽) | ◇飲み終わった大きめのペットボトルの中にビーズやおはじきなどを入れ、周りに飾りを付けてギターを作って、劇で使う。 | |
10時間目 | 「コンポストを見に行こう」(生活) | |
○コンポストを活用している様子を見せてもらう。 | ◇地域の家庭を見学 ◇地域の方から学ぶ 「野菜くずなど、台所から出るごみは、全部コンポストに捨てるよ。」 | |
11時間目 | 「土壌混合法をやってみよう」(生活) | |
○土壌混合法の仕方を学ぶ。 ・土壌混合法について観察記録を書く。 ・タマネギの皮と貝殻は土にならないことを知る。 | ◇生ごみを減らす方法に土壌混合法もあることを知らせる。 ◇外部講師の招へい | |
12時間目 | 「看板をつくってみんなに知らせよう」(国語・図工) | |
○看板をつくって全校のみんなに生ごみの出し方や土壌混合法のことを知らせる。 ・水に濡らさない ・絞って乾かす ・ごみ出しの前に絞る ・出さない工夫をする ・生ごみから栄養満点の土をつくる。 | ◇どんなことを書けばいいか、分かりやすく知らせる工夫をさせる。 ◇自治体が提唱するスリーマイ行動(マイバック・マイボトル・マイ箸)について知らせる。 |
● その後の展開例等
■一人ひとりの力は小さいが、自分たちにもできるという意欲と自信をもって地域や社会に発信していくことで、社会を変える大きな原動力となることを期待して、年間を通して生活単元学習を行っている。さらに、子どもの思いを捉え、教科学習とのつながりを考える事で多様な表現を引き出し、質の高いESDを展開している。
○サツマイモの収穫(生活)収穫量 ツルの長さ(算数) リースづくり(図工)
・サツマイモのツルでクリスマスリースを作り、全校に配って飾ってもらう。
・クリスマスが終わったらリースを細かく砕いて小動物の餌にする。
○生ごみワーストワン脱出大作戦を広めよう!(生活・国語)
・4年生が社会でごみの勉強をしているので、教室を回って出前授業をする。
○壁画を作ろう!(図工)
・自分たちがこれまでやってきたことを思い出して等身大の壁画を作る。
○自分たちの思いをいろいろな人に伝えよう(生活・国語)
・来校者にもアイデア集について説明する。
・話したことを台詞にして台本を作り劇をして見てもらう。
・地域ケアプラザのお祭りに出て劇を見てもらおう。水切り体験もしてもらおう。
○環境カルタを作ろう(国語)
○エコプロダクツ展・学習発表会で発表しよう(生活・国語)
・来場者に劇を見てもらったり、説明を聞いてもらったり、クイズや体験をしてもらったりする。
● 地域で実践するときの補足情報
- 土壌混合法:生ごみと土を混ぜ合わせることで、好気性の微生物が生ごみを分解し、土壌を豊かによみがえらせる方法。誰でもプランターで簡単にできる、生ごみの削減と土壌の回復法である。
やり方:2〜3cmに刻んだ濡れた生ごみと乾いた土をプランターに入れて混ぜ合わせて、直射日光や雨の降り込まない場所に置く。時々かき回し、3週間ほど経ったらフルイにかける。これで、栄養のある土に生まれ変わる。 - 看板づくり:土壌混合法の手順を板に書いて、プランターの近くに設置し、学校のみんなや来校者に知らせる。
- 地域へ発信していくために、地域ケアプラザや地区センターなどと連携を図っていくことが欠かせない。
- 大人の意識を変えることは難しいが、柔軟な子どもの意識を高めることは、今後の生活に大いに役立つ。
- 一過性の取組とせず、価値を実感することで、次年度以降も継続して取り組み、さらに、将来にわたって取り組み続ける意志を育むことが重要。