間伐材を活用して「My箸」を作ろう

このプログラムは、「公益社団法人 環境生活文化機構」のプログラムを基にしています。

● 目標①普段使う箸を「ケ」の箸とすることに対し、割り箸を祝い事や神事の際は「ハレ」の箸として扱う日本の伝統、また適度に木を間引くことでより豊かな森林を育てるという間伐の果たす役割や日本の荒廃した森林の現状、海外の安価な木材の輸入による森林の乱伐問題など様々な視点からテーマである「割り箸」について学ぶことで、多角的かつグローバルな視点を培う。
②自分の生活の周辺にある木竹製品を発見・認識することにより、里山からどのような生活具が産出可能か考える。
③安価な海外製が普及する割り箸の現状を学ぶことを通して、衣料品など他の身近な製品にも目を向け消費生活のあり方について考え直す。
● 概要箸や椀の食具、家屋に薪燃料など、日本人は古くから里山の木竹材に生活を支えられてきた。身近な木製食具「割り箸」をテーマに、割り箸の使用が自然破壊につながるのか、エコなのか考えることをきっかけに、実際の間伐作業や森の様子の見学をとおして、人と里山の関わり方、間伐の果たす役割について学び、日本の森林の現状、また海外の安価な木材の輸入による森林の乱伐への問題意識を育む。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
中学校1〜3年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。
中学校1〜3年技術・家庭(技術分野)(家庭分野)2 A 材料と加工の技術
(3)これからの社会の発展と材料と加工の技術の在り方を考える活動などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 
ア 生活や社会,環境との関わりを踏まえて,技術の概念を理解すること。 
イ 技術を評価し,適切な選択と管理・運用の在り方や,新たな発想に基づく改良と応用について考えること。

2 C 消費生活・環境
(3)消費生活・環境についての課題と実践
ア 自分や家族の消費生活の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けて環境に配慮した消費生活を考え,計画を立てて実践できること。
中学校3年理科(第2分野)2 (7)自然と人間
ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 
㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用
自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。

● SDGsの要素

自然の恵みを生活に取り入れながら,自然を守るという「相互性」を生かした日本の伝統的な文化を知る。
実際の間伐作業や森の見学を通して,人と里山の関わり方,間伐の果たす役割について学ぶ。

● ESDの要素

自然の木竹材から箸や椀などの多様な生活必需品を生み出してきた日本人の知恵を学ぶ。
里山資源から生活必需品を生産することで、自然の恵みを生活に生かすと同時に、里山の自然を守ってきたという生活と自然保護の相互性を生かした日本の伝統的な文化を知る。
日常的に使う割り箸を安価な海外産か割高な国産かどちらを使うかの選択よって、森林の破壊か日本の森林の適正な維持につながるという、消費者としての責任について学ぶ。

● ESDの能力・態度

日常生活で当たり前に使う食具「割り箸」を通じて、何が地球温暖化の防止につながるのか、どうすれば自然を守ることができるかについてより深く考え、本質を見抜く力をつける。
割り箸の使用は自然破壊か、エコにつながる行為なのか、環境、生活、文化、生物多様性等、多角的な視点から考える。
ディベートやグループ作業等を通して、主体的に考え、自発的に意見を述べるなど進んで参加する態度が育成できる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

11時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目割り箸は自然破壊なのかエコなのかどちらだろう?
・まず自分の考えを書く。
・互いに考えを発表し合い、意見交換する。
(「割り箸を使うことは、自然破壊かエコか?」というテーマについて議論する。)
◇身近な食具である「割り箸」をテーマに、使い捨て、原料となる木材調達のための森林伐採など様々な観点から、割り箸使用について考える。
◇「自然破壊派」と「エコ派」の両方の意見に分かれるようであれば、ディベートを行い、議論を深める。
◇この議論を通して子どもたちの環境問題やエコに対する意識を刺激する。
◇指導者は議論をとおして、自然資源の適正な利活用や環境問題に対する子どもの知識の量や深さを計る。
2・3時間目割り箸が自然破壊なのかエコなのか調べてみよう

・「自然破壊派」と「エコ派」にわかれて、調べ学習を行う。

◇インターネットや図書館を活用し、「自然破壊派」と「エコ派」に分かれ、それぞれの立場から自分たちの論を強化するための調べ学習を行う。
◇調査テーマとしては、自然環境保護、地球温暖化、間伐材や森林の利用、割り箸の文化や歴史、利点・欠点、素材の種類、生産状況(国産、海外製)など。
4時間目「自然破壊派」と「エコ派」にわかれ、プレゼン・ディベートをしよう
・調べた結果をもとに、2つの「派」に分かれてそれぞれの立場からの主張をプレゼンする。
・プレゼン内容をもとにディベートを行う。
◇「割り箸」を題材にした調べ学習、プレゼン、ディベートの一連の学習をとおして、より専門知識を学ぶ土台をつくる。
◇1つのテーマについて様々な視点からとらえることで多角的な視点を養い、思考力を深める。
5時間目現地へ行って間伐材について学ぼう
・実際の間伐作業を見学・経験する。
・間伐がなぜ必要なのかを学ぶ。
◇スギ・ヒノキなどの人工林の基礎知識や、人工林と広葉樹林(薪炭林)の違いの基礎を学ぶ。また、実際に森林に入り人工林や広葉樹林の違いを見たり、間伐体験をしたりして実際の自然体験を通して環境問題を肌で感じる。
◇間伐体験をとおして、日本人が身近にあった木や竹を利用して生活してきた歴史を知る。
◇間伐の必要性を学ぶことで、導入テーマの「割り箸問題」が輸入材を使うか国産の間伐材を使うかにより、管理が行き届かず荒廃している日本の森林の現状と、海外の安価な木材の輸入による森林の乱伐の問題につながることを理解する。
6時間目間伐材の利活用方法を考えよう
・間伐材の利活用方法を考える。◇各地の伝統工芸など里山と人の生活のつながりを事例に上げて紹介し、子どもたちに自分たちで間伐材の有効利用を考えさせる。
7・8時間目間伐材を使って「My箸」を作り、日常生活で使用しよう
・切り出しナイフの安全な使い方を学ぶ。
・「My箸」のデザインを考え、ナイフを使い自分で作成する。
◇実際に切り出しナイフを使って、怪我をする危険なナイフの使い方を例に出して説明しつつ、具体的にナイフの安全な使い方を教授する。
◇よく研いだナイフの方が安全であることを教える。
◇スギ・ヒノキなどの間伐材を粗く割った材料を事前に用意しておく。
◇作成する際、自分にとって使いやすい長さを指導する。
◇自分で実際に使う「My箸」のデザインを考えて、自らの手で作成し、家庭での食事や学校の給食の時間に使うことで、人の手による製品創造の素晴らしさを再認識する。
〔間伐材を鉈割りしたもの、切り出しナイフ、軍手、紙やすり(粗目、細目)、自然由来の塗料(蜜蝋等)〕
9・10時間目学んだことをまとめてプレゼン準備をしよう
・この学習をとおして学んだことをまとめ、プレゼンの準備をする。◇この学習を通して学んだこと、考えたこと、これからの生活に活かしたいことを振り返り、発表資料にまとめる。
◇安価な海外製が普及する割り箸の現状をもとに、衣料品など他の身近な製品にも目を向け、消費生活のあり方について考える。
◇発表内容が聴衆に分かりやすく伝わるようパソコンのパワーポイントなどを利用して資料を用意し、プレゼンの練習をする。
〔模造紙、筆記用具、パソコン〕
11時間目お世話になった方や保護者に学んだことを発信しよう
・お世話になった方や保護者に、学んだことをプレゼンする。
・プレゼンを聞いた人から感想を聞く。
◇この学習でお世話になった方や保護者など外部の人の前でプレゼンする。
◇発表を聞いた人から感想を聞くことで自らの経験にフィードバックする。
〔パソコン、プロジェクター〕

● 地域で実践するときの補足情報

  • プログラム所有団体が提供できるリソースやその条件(地域や経費的な条件など)
    ▷場所や素材の提供
    ▷ナイフやノコギリ等の機材の貸与
    ▷経費についてはプログラムの内容によるが材料費等を含み1000円程度(交通費、食費を除く)
  • 地域色が強いプログラムの、他の教材での展開可能性 など
    ▷近くに森林等がない場合の代替案として以下のようなものが考えられる。
    ①竹、流木、古材、庭や公園の落木を使ったMy箸づくり(流木などはスプーンづくりなどにも適する)
    ②庭や公園の落木を使ったMy箸づくり
    ③庭や公園にどのような木が植えられているかを学ぶ