外来生物を学ぶ環境学習
このプログラムは、「エコツアーふくみみ」のプログラムを基にしています。
● 目標 | ①外来生物問題を正しく理解し、新たな外来生物を増やさない行動をとれるようになる。 ②外来生物問題の解決に向けて駆除作業などの積極的な行動を行う。 ③生物多様性の重要性を学び、身近な自然に関心を持てるようになる。 ④生態系全体の問題を理解しつつ、個の生命を尊重する道徳的な視点を養う。 |
● 概要 | 体験を通して外来生物問題を学び、考える力をつけ、周囲へ発信するプログラムである。 本プログラムは、事前学習・現地学習・事後学習から構成される。事前学習では、外来生物の基礎知識を学び、地域の事例を知る。現地学習では、校内や学校周辺など身近な環境の外来生物についての調査や問題となっている外来生物の駆除作業を行う。事後学習では、架空の設定で外来生物の導入について議論を行い、学習の成果を保護者や地域の方へ発信する。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
中学校3年 | 理科(第2分野) | 2 (7)自然と人間 自然環境を調べる観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (ア) 生物と環境 ㋑ 自然環境の調査と環境保全 身近な自然環境について調べ,様々な要因が自然界のつり合いに影響していることを理解するとともに,自然環境を保全することの重要性を認識すること。 |
中学校1〜3年 | 道徳 | 2 D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること [生命の尊さ] 生命の尊さについて,その連続性や有限性なども含めて理解し,かけがえのない生命を尊重すること。 [感動,畏敬の念] 美しいものや気高いものに感動する心をもち,人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。 |
中学校1〜3年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
学校周辺の調査や海の外来生物の問題を正しく理解し,生物多様性の重要性を理解する。 | |
学校周辺の調査や陸の外来生物の問題を正しく理解し,生物多様性の重要性を理解する。 |
● ESDの要素
外来生物の繁殖は在来の生態系へ影響を及ぼし、生物多様性が失われる原因となる場合がある。 | |
人の行動により持ち込まれる外来生物は、人それぞれの行動、考え方、職業や時代など立場を考慮し責任を論じる必要がある。 | |
個の生命を奪う外来生物の駆除において、人間活動全体の責任を意識する必要がある。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
5時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 【事前学習】外来生物ってなんだろう? | |
・外来生物の基礎知識を学ぶ。 | ◇ゲーム等を通して興味関心を引き出しながら外来生物の基礎を学ばせる。 ◇外来生物が環境に対して実際にどのような影響を及ぼしているのか具体例を提示する。例えば、害虫駆除目的で導入された生物の胃内容物を示す、環境省制作の資料映像を見せる等が考えられる。 ◇プログラムを実施する各地域に即した事例を紹介するとよい。 ◇外来種の問題は、地域の在来種を保護し、生態系を保全することにつながることを理解させる。 〔食物連鎖などを伝えるゲーム〕(補足 参照) | |
2時間目 | 【現地学習】学校に外来生物っているの? | |
・校内や学校周辺を調査して、身近な外来生物について調べる。 | ◇校内の建物配置図や学校周辺の地図を用意し、発見した外来生物(主に植物が多いことが予想される)を記載する。 ◇グループごとに調査を行い、発見した外来生物を報告しあう。 〔地図、図鑑〕 | |
3時間目 | 【現地学習】外来生物駆除作戦 | |
・環境に影響を及ぼしている外来生物の駆除作業を行う。 | ◇植物の場合は取り組みやすいが、動物の場合は安全への配慮を怠らないようにする。 ◇特定外来生物法に違反しないように注意する。 ◇環境省(地方事務所)に相談のうえ、協力を求めるとよい。 ◇PTAにも協力を依頼し、外来生物問題の発信の場とするとよい。 〔駆除に必要な道具〕 | |
4時間目 | 【事後学習】外来生物会議 | |
・架空の設定で外来生物の導入問題を議論する。 | ◇具体的な職業の立場で議論を行い、立場により物事の優先度や考え方が異なることを知る。 ◇外来生物の意図的な導入は慎重であるべきことを伝える。 ◇専門的な知識をもつ機関・団体・研究者等のゲストが同席できるとよい。 〔架空の地図〕 | |
5時間目 | 【事後学習】伝えよう!外来生物のこと | |
・学習した外来生物のことを学校外へ発信する。 | ◇学習したことをまとめ保護者や地域の人たち、下級生(例えば中学生から小学生)に伝える。 ◇発表の際は、「生命尊重」の視点を入れる。 ◇地域の自然を次世代に引き継ぐために、「駆除」以外の方法があるのかを考えさせて発表させる。 ◇人に伝えようとする過程で学習したことを深く理解することができる。 〔プレゼン資料等〕 |
● その後の展開例等
- 石垣島での展開事例として
▷特定外来生物オオヒキガエルを解剖し胃内容物調査を行った。オオヒキガエルはサトウキビの害虫駆除目的で導入されたが、実際には様々な生物を捕食している。胃内容物を調べることでその事実を確認し、捕食された生物から生物多様性を感じ取る授業としている。
▷中学一年生を対象に行い、最後の活動として近くの小学校に出前授業として伺い、中学生が小学生に対して外来生物問題についてプレゼンテーションを行い、その後校内の調査を一緒に行った。 - そのほかの発展的な展開として、学習成果の発信を地域に留まらず行政への提言や新聞等を介して多くの人に伝えることや、誰に対してのどのような発信が問題解決にとって有効かの議論を行うなどが考えられる。
● 地域で実践するときの補足情報
- 石垣島でオオヒキガエルを題材とした展開例のように、動物が対象となる場合は駆除による生態系の保護の重要性を学ぶ一方、駆除される個の命の大切さも考えさせる。矛盾するように見える二つの学習目標の中で悩みながら答えを考える必要があり、対象は中学生以上が適していると考えられる。
- 外来生物が侵略的外来生物である場合は駆除以外には方法がないことを正しく伝える。
- 身近な外来生物が主に植物である地域では、学習目標を「外来生物の正しい理解」「地域の自然を知る」「駆除作業などを通しての社会貢献への参加」などに絞ることで、小学校高学年を対象として実施することも可能である。
- 食物連鎖を伝えるゲーム:生物が描かれたカードを用いて食べる・食べられるの関係を考える。