かばんの中でも温暖化?!
〜学校生活と地球環境とのつながり

このプログラムは、「特定非営利活動法人 横浜LCA環境教育研究会」のプログラムを基にしています。

● 目標①最近の様々な自然災害や気候変動は人間の活動によるCO2等の増加による地球温暖化が原因であることを学ぶ。
②身近な製品のライフサイクルを考え、日常生活や学校生活がこれらの生産段階や処分段階によって成り立っていることを認識する。
③身近な製品のライフサイクルを通して、自らの日常の消費行動が、自分の見えない部分で地球温暖化に密接につながっていることを実感する。
④日常生活を見直し、CO2排出量削減のために自らが出来る具体的な解決行動を考察し行動に移す。
● 概要地球温暖化について学び、CO2削減のために自分たちにできることはないかと考えた生徒たちが、教育用LCAソフトウェア「かばんの中でも温暖化?!」を使ったパソコン実習で、自分の持ち物の生産・輸送・処分過程等で発生するCO2排出量を計算し、そのCO2排出の削減シミュレーションを行う。自分の持ち物を対象に自分自身でCO2排出量を計算することにより、自らの日常の消費行動が地球温暖化の原因となっていることを実感をもって認識する。これにより日常生活を見直し、CO2排出量削減のために自らができる具体的な解決行動を考えみんなで実行する。実施時には講師が訪問し、LCA(物のライフサイクルを考慮した環境負荷の評価方法)の考え方、ソフトウェアの使い方、パソコン実習の進め方等を解説する。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
中学校1〜3年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。
中学校3年理科(第1分野)2 (7)科学技術と人間
ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 
㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用
自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。
中学校1〜3年技術・家庭(家庭分野)2 C 消費生活・環境
(3)消費生活・環境についての課題と実践
ア 自分や家族の消費生活の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けて環境に配慮した消費生活を考え,計画を立てて実践できること。

● SDGsの要素

自分の持ち物の生産・輸送・処分過程で発生する二酸化炭素排出量をシミュレーションし,日常の消費行動を省みる。
地球温暖化による自然災害や気候変動について理解し,解決策を考えて話し合う。

● ESDの要素

パソコン実習によるCO2削減シミュレーションによる削減効果を仮想的に体験することで、自身の消費行動がCO2の増加に関わっていることに気づく。
モノのライフサイクルにおけるCO2排出を通してライフサイクル思考すなわち自分自身の生活と社会とのつながりを実感し、互いに協力して問題解決する必要性に気づく。
パソコン実習により生徒自身の消費行動の環境影響や、CO2削減シミュレーションによる環境保全効果を仮想的に体験することで、自身の行動の責任に気づく。

● ESDの能力・態度

エコバッグやマイカップ等なんとなく環境にやさしいと思っていた行動も、ライフサイクルを考えることで製造時や使用時(洗浄、短期間の買い替えによる資源消費)、廃棄時(短期間 の買い替えによる廃棄物量増加等)の環境影響を考慮する必要があるという意識を育てる。
エネルギー消費やCO2排出の増加や削減について、直接的なものだけでなく、消費生活を通した間接的な影響までも考慮しなければいけないという多面的な物の見方を促す。
自分の消費生活のライフサイクルを考えることで、消費者の生活が生産地の環境にも影響するというつながりを考慮する意識を身につけることができる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

8時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目環境に優しい行動ってどのようなこと?
・自分が考えられる環境に優しいと思う行動を互いに発表する。
・なぜそれが環境に優しいのか考える。
・事例を身近な環境の保全、地球規模の環境保全に整理する。
・調べ学習の説明を聞く。
◇日々の生活で生徒自身や友人家族が実行している(した方が良いと言われる)環境配慮行動を書き出し、グループ毎にまとめる。
〔まとめ用ワークシート〕
◇その行動が環境に優しい理由を考えさせる。
◇グループ毎にまとめて発表:他のグループの意見を聞きながらなぜ今このような行動が必要と言われているのか自分たちなりに考えさせる。
◇考えていく中で「地球温暖化」や「温室効果ガス」「CO2」という言葉を生徒から引き出す。
〔CO2排出量を調べる宿題ワークシート配布〕
2時間目なぜいま環境に優しい行動が必要なのだろう?

・「地球温暖化 今、私たちにできること」DVD上映
・内容をまとめ、調べ学習の結果を確認し自分なりの感想や意見を発表する。

◇温暖化の原因は何か、温暖化の影響でどんなことが起こっているのか、このまま温暖化が進むとどうなるのかを理解する。
〔DVD内容のまとめワークシート〕
◇調べ学習の宿題の結果を提示し確認する。
◇DVDを見たり調べ学習の結果を比較したりする中で感じたことや意見を引き出し、次の時間につなげる。
3時間目①COの排出量を減らすにはどうしたら良いのだろう?
②携帯電話はその役目を終えるまでにどのくらいのCOを出すことになるだろう?
 
・グループ学習でCO2排出量の削減方法を考え、発表する。
・携帯電話の一生について排出するCO2という視点で考える。
・宿題としてペットボトルのライフサイクルを調べてくる。
化石エネルギー消費の増加によりCO2排出量が増加していることを理解し、省エネ行動の有効性を確認する。
〔スライド:LCTの導入〕
◇携帯電話についてCO2増加の理由を答えさせる。
◇携帯電話を例にした「もの」のライフサイクルの理解。
LCCO2の考え方、影響の理解。
(原料採取、輸送、製造、使用、廃棄にCO2排出要因があること、使い方によりCO2が減らせることを認知させる。)
〔ペットボトルの宿題ワークシート〕
4時間目①今までの復習をしよう
②携帯電話から出るCOの計算方法を知ろう
・調べてきたことを発表。
・ソフトウェアを使ったLCCO2算出デモを見る。
・PCによるLCA実習の準備としてカバンの中の持ち物を書き出す。
◇調べ学習の結果を確認・LCAソフト(カバンの中でも温暖化?!)→講師用のみ、講師によるデモ。
◇2時間目の携帯電話のLCをCO2排出量で確認し、使い方によるCO2排出量の変動を理解する。
〔持ち物リストワークシート〕
◇各製品について個数、使用期間、処分法を整理して記載する(解説のみとし、ワークシートは次回までの宿題とする)。
5時間目①自分の持ち物のCOを計算してみよう
②友達のCOと比べてみよう
③自分のカバンの中のCOを減らそう
 
・自分の持ち物のCO2を計算する(PC実習)。
・CO2算出結果について比較しながらディスカッションする。
・自分の持ち物のCO2を削減するシミュレーションを行う(PC実習)。
◇LCAソフト(カバンの中でも温暖化?!)
各自書き出した持ち物リストワークシートに従い入力。
〔PC(1人1台)使用〕
◇10 kg ~ 100kg当りを区切って排出量別に挙手。
◇多かった人、少なかった人を比較しその原因を考える。
◇入力したデータを使い、使用期間・所有個数・処分法を変えて、CO2削減をしてみる(生活に支障をきたさないという制約があることを意識させる)。日本政府が検討している数値目標等を挙げて各自の削減目標にしてみる。
6時間目①「自分のCO削減案をまとめよう
②友達の削減案と比較しよう
③実習を通して考えたことをまとめよう
・前時の結果を整理しベストの削減案をまとめる。
・互いに発表し合い、結果について討論する。
・各自でPC実習や討論を通して考えたことをまとめる。
◇CO2の削減量がただ単に多いことを競うのではないことを確認する。(現実の生活に支障をきたさないこと)
1.減らし方を聞く(目標に行かなかった人の理由も)
2.実行可能か質問したり不可能の理由を発表したりする
◇普段の生活が、知らぬ間にCO2排出の原因となっていたことに気づかせる。身近な行動がCO2の増加や削減に係わることを確認する。
7時間目①今までの学習を整理しよう
②学んだことを基にCO削減のための行動目標を立てよう
 
・持ち物リストワークシートを基に新しい「持ち物リストワークシート」を使い、行動目標とCO2削減目標を作成する。◇答え合わせを通して、CO2と地球温暖化の関係やその影響を再確認し普段の生活が地球温暖化につながり、地球規模で影響を及ぼしていることを理解する。
〔新しい「持ち物リストワークシート」〕
8時間目①今まで行った行動の結果を確認しよう
②結果を発表しよう
③成果を振り返ろう
・自分の持ち物のCO2を計算する(PC実習)。
・互いに結果を発表し合う。
・「地球温暖化とCO2の関係」を見て成果を振り返る。
※目標の達成度の確認(実施は数か月後)
◇新しい「持ち物リストワークシート」を使い、再度記入。「LCAソフト」によるLCCO2の算出。
◇目標達成者、非達成者の発表。
◇達成できなかった人は原因と考察を発表。
◇達成できた人は達成のための苦労等の感想発表。
〔スライド〕
◇CO2削減のための行動が地球環境に貢献したことを理解し、今後の継続的な活動につなげる。

地域で実践するときの補足情報

  • プログラム所有団体が提供できるリソースやその条件
    本教材は横浜国立大学環境情報学府本藤研究室HPからダウンロードできるもの(ソフトウェア、講義スライド)を 使用する。(ただし「地球温暖化 今、私たちにできること」DVDは除く)
    指導法については、横浜LCA環境教育研究会がサポートします。なお、現地でのサポートが必要な場合は交通費等 の実費をご負担下さい。実施時に講師が訪問し、LCA(物のライフサイクルを考慮した環境負荷の評価方法)の考 え方、ソフトウェアの使い方、パソコン実習の進め方等を解説することも可能です。
  • その他、LCAの講義スライドについては、横浜LCA環境教育研究会のHPからダウンロードできます。
  • プログラム所有団体が関わらない場合の代替リソース案
    「地球温暖化 今、私たちにできること」DVDは、各都道府県の温暖化防止活動支援センター(神奈川県の場合は、 かながわアジェンダ推進センター)で貸出可能。