食をヒントに学ぶ私たちの水…郷土を知るプログラム
このプログラムは、「かがわ環境カウンセラー協議会」のプログラムを基にしています。
● 目標 | ①身近な食材の生産地を知り、私たちの食生活は外国に依存し、他国の水資源やエネルギーを消費していることに気づく。 ②地域の食文化を知り、旬の食べものや地産地消が省エネであることを学ぶ。 ③地域性から水の大切さや水利用の工夫など水の歴史や文化を知り、節水意識を高める。 ④学んだことを生活に活かすことができるようになる。 |
● 概要 | 新聞の食品広告からバーチャルウォーターやフードマイレージを学び、水と人とのかかわりから水の大切さを学ぶプログラムである。また、地産地消や水利用の工夫が省エネであること、地域の食や水の文化を学ぶことが郷土を知ることにつながる学習にもなる。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校5〜6年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
浄水場での水処理の模擬体験や水の使用量調査などから,安全な水を確保・維持することの重要性を理解する。 | |
地域の人との交流を通して郷土の食や水の文化を学び,その知恵や工夫を持続可能な消費生活として活かそうと考える。 | |
食料自給率やフードマイレージなどの考え方を学び,旬の食べ物や地産地消は省エネルギーであり,地球温暖化防止につながることに気づく。 |
● ESDの要素
地域の個性である風土や文化、歴史など多面的な価値観を共有してきた暮らしに気づく。 | |
食材や水は、さまざまな国や地域を介し、膨大なエネルギーを消費して運ばれていることを認識する。 | |
旬な食材が体によいこと、地産地消が食料自給率アップにつながることを学び、生活を再考することができる。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
6時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 私たちの食べものは、どこから来るのかな? | |
・身近な食材の生産地を知る。 ・私たちの食生活は、外国に依存し、他国の水資源やエネルギーを消費していることに気づく。 ・旬や地産地消が省エネであり、地球温暖化防止につながることを学ぶ。 | ◇子ども達に最近の食事メニューを問い、黒板に書き出す。季節感を表す食材や産地を問う。 ◇グループ毎に新聞の食品広告とポストイットを配布し、記載されている食材を付箋に書き出すように指示する。1枚の付箋には、1食材と産地のみ記入させる。 ◇魚介類は青色、野菜果物は黄色、肉類は赤色の付箋紙を使う。制限時間を設ける。 ◇記入した付箋を食材毎にジャンル分けした世界地図、日本地図各3枚に貼りつけるように指示する。 ◇地図から何が読み取れるか、気づいたことを子ども達と話し合う。 ◇食料自給率、フードマイレージ、バーチャルウォーターの意味を補足すること。特に、水に関心を持たせる言葉かけが必要である。輸入された食べものを育てるために使われた水も飲んでいることに気づかせる。 〔新聞・広告、付箋、ペン〕 | |
2時間目 | 私たちの水は、どこから来るのかな? | |
・地域のダムから私たちの家庭までの配水や浄水場のしくみを学ぶ。 | ◇立体模型や地図を用意し、水道の水はどこから来るのかを問いかけ、その流路を説明する。 ◇水道水は飲めるが、川の水が飲めないのはなぜかを問う。ミネラルウォーターと水道水の水質基準の比較。 ◇毒と称した食紅100%を百万分の一まで希釈する実験を行う。 ◇浄水場では、水の安全性を確保するために大変な費用と労力をかけて処理をしていることを説明する。 ◇浄水場での水処理を模擬体験させる活動を行う。地域の川の水質カードを使用する。 ◇体験した感想を問い、降水量の少ない地域性について説明し、全国や県、市などの1人1日当りの生活使用水量を比較する。 ◇蛇口をひねると水が出るという便利さと引き換えにしたもの「水に対する思いやり」や命を支えている水の大切さを伝えて、節水意識を高める。 〔地図、地域の川の水質カード〕 | |
3時間目 | 地域の旬な食材や郷土料理を調べよう! | |
・地域の旬の食材を知る。 ・旬な食材を食べると身体によいことを知る。 ・地産地消が省エネであることを再確認する。 ・郷土料理を知る。 | ◇予め、春夏秋冬にグループ分けをして、旬な食材や郷土料理を調べさせておく。料理は写真でもよい。 ◇グループ内で野菜、果物、魚介類担当を決めておく。 ◇グループ毎に調べたものを模造紙に書かせる。 ◇グループ毎に発表させて、黒板等に掲示する。 ◇指導者は、春夏秋冬の食材の効能を説明する。また、ハウスものや輸入のものとの消費エネルギーの違いを説明する。食材カレンダーや地図があるとよい。 ◇四季の郷土料理の写真など資料を用意し、興味を持たせる。 〔模造紙、ペン、四季の郷土料理の写真など〕 | |
4時間目 | 地域の水環境を調べよう! | |
・地域の水の歴史、風俗、伝説など水と人とのかかわりを学ぶ。 ・家庭の水の使用量から1人1日の使用量を知る。 ・降水量の少ない風土から先人たちの水利用の工夫や知恵を学ぶ。 | ◇予め、グループ分けをして、地域の水の歴史、風俗、伝説別に調べさせておく。併せて、個々に家庭の水道使用検針票から1人1日の使用量を調べておくように指示しておく。 ◇グループ毎に調べたものを模造紙に書かせる。 ◇グループ毎に発表させて、黒板等に掲示する。 ◇指導者は、地勢や気候も含めて地域の人と水とのかかわりを調べておく。 ◇降水量の少ない県なのに1人当たりの水の使用量は、全国平均を超えていることに気づかせ、節水意識を高める (1Lの節水は、1Wの節電につながる)。 〔模造紙、ペン〕 | |
5時間目 | 私たちは、何ができるのか考えてみよう! | |
・食材の選び方、水の使い方で環境への負荷が異なることを学び、生活を見直すことができる。 ・地域の先人たちが築いてきた知恵や工夫を生活に活かすことができる。 ・学んだことを伝えることを学ぶ。 ・地域を知ることが大切であることを学ぶ。 | ◇これまで学んできたことをふりかえり、深めて、まとめさせる。グループで発表させる。 ◇身土不二、スローフード運動(守る・教える・支える)、ロハス、グリーンコンシューマーなど言葉の意味を伝える。 ◇給食を残さない、節水などが省エネにつながること、地産地消や水利用の工夫を生活に活かせるような言葉かけが必要である。 ◇同じ食べものなら遠くのモノより、近くのモノ、季節にあった旬のモノを買う。包装はしてないモノがいい。 ◇買い物に行く時は、マイバックを持って、徒歩か自転車にする。 ◇調理法、片づけ、廃棄など視点を広げ発展させるとより深い学習となる。 ◇学習した成果を廊下など構内に展示し、みんなに伝えさせる。 | |
6時間目 | 地域の人と交流しよう!教わろう! | |
・お年寄りなど地域の人に郷土料理を教わり、味わおう。 ・地域の水にかかわるお話を聞こう。 ・川の清掃活動に家人と参加しよう。 | ◇地域のコミュニティなどに声掛けをして、専門家や伝承者などを講師として招く。 ◇旬の食材を準備し、家庭科の教室などを利用して郷土料理を地域の人々と一緒につくる。 ◇子ども達と郷土料理を味わいながら、先人たちの水利用の工夫やお話を聞けるように準備する。 ◇できれば、地域の高齢者施設での食事会、川や池・水路などの清掃活動に参加できるように関係部署に働きかける。また、地域に埋もれていた特産物の再評価につながるとよい。 |
● その後の展開例等
- 学校では、1校当り1クラス17時間のカリキュラムを組んで「いのちのつながりと暮らしのヒント」と題して実施している。カリキュラムの中ほどで「地球ぐるぐる水の旅」「安全な水ってどんな水?」「まちづくりから考える水とゴミ」「旬って何だろう?」「地球にやさしいお買いもの」「旅する食べもの」という順で授業を行っているが、今回は汎用化のために、この中から部分的にピックアップして、新たなプログラムとして作成した。
- プログラムの展開2時間目の「模擬体験」とは、リンボーダンスを行い、基準達成のために浄水処理に要する努力の大きさを実演する活動である。バーの高さは水質を、バーの下をくぐれれば処理された水を表す。
※リンボーダンス:西インド諸島トリニダード島を起源とするダンス。音楽に合わせて上体を後ろへ大きくそらし、水平に渡された棒にふれないようにくぐり抜ける。棒が体にふれたり、のけぞって倒れたりするとアウトとなる。
● 地域で実践するときの補足情報
- プログラム所有団体が提供できるリソースやその条件 県内外を問わず出前授業として実施していますが、講師が限定されるため2〜3週間の猶予が必要です。また、運営活動費確保のため有料です。ご相談ください。
- プログラム所有団体が関わらない場合の代替リソース案プロジェクトWETアクティビティ「限界ギリギリ」 プロジェクトWILDアクティビティ「食べている水」小学館教育技術MOOK「小学校環境教育実践事例集」P106エコ・チョイス!