みんなでつくろう!防災コミュニティファーム
〜まちなかの公園が地域を守る農園に!?〜

このプログラムは、 「国立大学法人愛媛大学」のプログラムを基にしています。

● 目標①自分達が住む地域(や日本全体)がどのような災害の危機に直面しているかについて認識を深めると共に、災害時の食糧不足の問題について理解する。
②コミュニティファームでの農業体験を通じて、日頃自分達が食べている野菜がどのように作られているかを学ぶ。
③地域住民とともに野菜栽培に取り組む中で、地域との関わり合いを深め、地域への帰属感や連帯感を育む。
④コミュニティファームで育てた野菜を防災訓練時の炊き出しの食材として活用することを通じて、地域全体で防災力を向上させることの大切さを学ぶと共に、自らが地域貢献に主体的に取り組む姿勢を身に付ける。
● 概要本プログラムでは、まちなかの公園や校庭の一部を子ども達と地域住民が共に野菜を育て、地域の防災活動に活かす「防災コミュニティファーム」として活用し、食と農を通じて災害に強い地域づくりのかたちを考え実践する学びの場を創出する。具体的には、地域の方々と一緒に、食と農の視点から、地域が抱える防災の現状と課題について学び、その解決に向けてどのような作物を育てるかを考える。その上で、畑作りから苗植え、草抜き、収穫までの一連の農作業を数ヶ月にわたり体験する。収穫した野菜は炊き出し訓練に活用し、地域の防災活動に役立てると共に、災害から自分達の命を自分達で守る姿勢やそのための食や農の大切さについて認識を深める。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
小学校5年社会
(2)我が国の農業や水産業における食料生産について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 我が国の食料生産は,自然条件を生かして営まれていることや,国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることを理解すること。
(イ) 食料生産に関わる人々は,生産性や品質を高めるよう努力したり輸送方法や販売方法を工夫したりして,良質な食料を消費地に届けるなど,食料生産を支えていることを理解すること。
(ウ) 地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめること。


(5)我が国の国土の自然環境と国民生活との関連について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。 
(ア) 災害の種類や発生の位置や時期,防災対策などに着目して,国土の自然災害の状況を捉え,自然条件との関連を考え,表現すること。 
(イ) 森林資源の分布や働きなどに着目して,国土の環境を捉え,森林資源が果たす役割を考え,表現すること。
小学校5〜6年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。

● SDGsの要素

仲間と協力しながら畑づくりをしたり,野菜の収穫を体験したりして,農業の観点から地域防災に役立つ方法を考える。
災害時に直面する危機について学び,起こりうる食糧不足の問題について理解し,災害に強いまちづくりについて話し合う。

● ESDの要素


地域の方々と一緒に野菜栽培に取り組むことによって、地域全体で助け合いながら災害から身を 守ることの大切さを学ぶ。

自分達で育てた野菜を地域の防災活動に役立てることによって、自分達自身で責任を持って地域 を災害から守る姿勢を培う。

● ESDの能力・態度

将来起こり得る災害を想定し、地域の問題について考えることが出来る。農作業に計画的に取り組むことができる。
地域の方々や仲間と協力して農作業に取り組むことができる。
地域を災害から守る上で、自分達で出来ることを考え、実践することができる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

12時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目災害時の食糧問題について考えよう!  
・自分達の住む地域が直面する災害の危機について学ぶ。
・災害時の食糧不足の問題について理解を深める。
◇東日本大震災や阪神・淡路大震災の事例を紹介する。
◇併せて、首都直下型地震東海・東南海・南海地震、その他自分達の住んでいる地域で起こり得る災害について説明する。
◇災害時に食糧が無くなったら、どのような事態が起こり得るかを想像し、災害に強いまちを目指す上で、食と農の大切さを認識してもらう。
〔過去の災害の映像〕
2時間目近所の公園を農園にしよう!(現地踏査)

・農園作りを行う現地に行き、現地の状況を把握する。
・そこで何を育てたいかを皆で話し合って決める。

◇育てる野菜を選定する上で、農業の専門家の意見を聞くと共に、地元の方々とも連携する。
◇限られた授業時間の中で、子ども達でも育てられるものを選定することが必要である。また、防災の視点から育てる作物を考えさせたい。
3時間目野菜の育て方を計画しよう!
・野菜を育てるためには何が必要かを考える。
・畑づくり、苗植え、草引き、水やり、収穫までの野菜を育てる上での基本工程を学び、今後のスケジュールや役割分担を決める。
◇2時間目で選定した野菜について、基本的な性質や特徴(原産国、輸入量、品種など)について、クイズ形式で学習し、興味・関心を持ってもらう。
◇野菜が育つために必要な要素(水、土、太陽、種、肥料等)を考えてもらい、野菜栽培の基本的な手順を学ぶ。
◇畑を耕すところから収穫するまでの一連のスケジュールを確認する。
4時間目みんなで畑を耕そう!(農作業1)
・現地で畑を耕す作業を実体験する。◇農業の専門家から技術指導を受ける。
◇農具を使用する上で、一人一人の安全面に十分に配慮する。
◇可能なかぎり、地元の方々と一緒に作業にあたる。
〔農具(スキ・クワ等)、軍手〕
5時間目みんなで苗を植えよう!(農作業2)
・苗植えを実体験する。◇苗は事前に準備する。
◇可能なかぎり、地元の方々と一緒に作業にあたる。
〔農具(スキ・クワ等)、苗、軍手〕
6時間目育てた野菜を地域防災に活用する方法を考えよう!
・育てた野菜をどのように地域防災に活用するかをクラスの中で話し合う。
・一つの活用方法として、地域防災訓練の炊き出しの食材として利用できることを理解する。
◇育てた野菜を活用する上では、あくまでも地域全体の利益に供する方法を考えるように促す。
※本プログラムでは、育てた野菜の一部を防災訓練時の炊き出しの食材として活用することを想定している。自分達の育てた野菜が地域防災力の向上に貢献できることを認識してもらうと共に、地域貢献のあり方について考えるきっかけとなるように配慮する。
7時間目みんなで畑の手入れをしよう!(農作業3)
・畑での草抜きや水やり作業を実体験する。◇畑の手入れは、適宜、実施する必要があり、地元の方々と十分な連携を取ることが必要となる。
〔ジョウロ、軍手〕
8時間目みんなで収穫しよう!(農作業4)
・育てた野菜を収穫する。◇可能なかぎり、地元の方々と一緒に作業にあたる。
〔農具(スキ・クワ等)、軍手〕
9・10時間目 育てた野菜を地域に活かそう!
・育てた野菜を用いた炊き出し作業を手伝う。◇自治体や地元関係者と連携しつつ作業を行う。
〔調理器具〕
11・12時間目 食と農を通じて災害に強いまちづくりを目指そう!
・育てた野菜の意義を考える。
・農業の観点から、災害に強いまちづくりについて考える。
・これまでの活動を通して、感じた事、気付いた事を振り返り、発表する。
◇収穫した野菜でどの程度地域の人々の命を守る上で効果があるかを学ぶ(適宜、データを示す)。
◇今後、防災コミュニティファームでどの程度の作物を作れば、地域の人々を災害から守ることが出来るかを考える。
◇野菜作りに協力頂いた方々への感謝の気持ちを伝える方法を考え実行する。必要に応じて、関係者に来てもらい、感謝の意を直接伝える。

● 地域で実践するときの補足情報

  • 公園の一部をコミュニティファームとして活用する場合、事前に市町村等の公園管理者と十分に連携し、許認可を得ておく必要がある。また地元住民とも十分に協議することが大切である。可能であれば、関係者を統合したコミュニティファームの実施運営組織を立ち上げ、本組織を通じて、公園の利用申請、農作業の実施運営、畑の維持管理等を一括して行うことが望ましい。
  • コミュニティファームでの農作業にあたっては、周辺農家や専門家等の技術的支援が得られると効果的に進めることが出来る。
  • 農作業に当たっては、生ごみや糞尿を堆肥として活用した自然農法に取り組むことによって、循環型社会に向けて環境に配慮した行動を実践する姿勢を養うことも期待できる。
  • 本プログラムは、小学校高学年を対象としているが、一部のカリキュラムを再編成すれば、小学校2年生の生活科において、農業体験や地域交流等を目的とした授業として展開することも可能である。