学校周辺ごみ調査隊
〜 地域の未来のためにどんな大人になりたいか 〜

このプログラムは、「特定非営利活動法人 くすの木自然館」のプログラムを基にしています。

● 目標①多様な自然環境に育まれた生物たちが生息する地域の自然環境を再認識し、人々の暮らしとの関わりを考える。
②地域を守る活動を行っている当事者から学ぶことで「自分たちの地域」に対する新たな気付きを得る。
③「自分たちが今できる事」を考え、当事者との協働的活動を通して、子ども達自身が実践する意欲とスキルを身に付け、「地域に住む者の一人」としての自覚や責任感を育てる。
● 概要学校周辺の「ごみ拾い調査活動」を通して、地域の自然環境を再認識し、自己の関わりについて考えることで、道徳的・倫理的規範を身に付け、地域の担い手としての自覚と責任感を育む。
①地域への関心の喚起
地域の自然や文化について知り、生活との関わりを認識する時間を持つ。
②地域実態調査活動
学校周辺のごみを拾い、その量を知り分析する。
③地域環境計画の作成
調査の結果を踏まえ、子どもたちの目線でごみを減らす対策を考え、地域に対して「自分達が今できること」を提案する。
④地域環境保全主体としての活動
環境計画をもとに、対策を実行し、その活動の結果をふりかえる。最後に保護者や地域住民へ学習の成果を報告する。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
小学校5〜6年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。
小学校5〜6年道徳2 C 主として集団や社会との関わりに関すること
 [勤労,公共の精神]
働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに,その意義を理解し,公共のために役に立つことをすること。

2 D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
 [自然愛護]
自然の偉大さを知り,自然環境を大切にすること。
小学校5〜6年家庭2 C 消費生活・環境
(2)環境に配慮した生活
ア 自分の生活と身近な環境との関わりや環境に配慮した物の使い方などについて理解すること。
イ 環境に配慮した生活について物の使い方などを考え,工夫すること。

● SDGsの要素

地域の自然環境と自己の関わりについて考え,地域の担い手としての自覚と責任感をもつ。
学校周辺のごみ拾いや調査活動を通して,ごみを減らす対策を考えて,提案する。
活動を通して,多様な生物たちが生息する地域の自然環境を再認識する。

● ESDの要素

学校周辺のごみ拾いを行うことで、周辺の環境が維持されているのは、誰かの手によるものだと知り、人々の関わり合いを知る。
ごみを減らすために自分たちにできることを考えることで、社会に与える自分の役割を認識し、責任と義務を自覚する。
地域の有志の方と共に活動することで、持続可能な社会を維持するための連携の大切さを学ぶ。

● ESDの能力・態度

自分たちの地元が将来、どのようになってほしいかを想像し、そのために自分たちが出来ることを考えられる。
地域ごみを減らす活動を行っている実践者と協力し、成果を上げることで、協力することの楽しさを学ぶことができる。
地域の景観維持に積極的に関わり、未来を担う主役という自覚を持つことで、進んで参加する心を育てる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

12時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1・2時間目学校周辺の環境を知ろう
【事前学習】
・地域の自然や文化について知り、生活との関わりを認識する。
【内容】
・近隣の山や川、田んぼなどの学校周辺の環境の紹介を「食」の視点から考える。
・および、「山」「海」「空」「潟」「田」に生息する身近な生き物を知る。
◇地域の自然環境の紹介により、子ども達にこれからの学習の場の見通し(イメージ)を持たせ、これからの学習に対する意識を育ませる。
◇上記の紹介の際に、「食」に視点をあてることで、親近感を得るようにする。
◇質問をしていくことで子ども達の大まかな認知度を把握する。
◇身近な生き物が暮らしの中のどの様な場所にいるのかを気付かせる。
3~5時間目学校周辺のごみの現状を知ろう

【地域実態調査活動】
・学校周辺の自然とごみの現状を知る。
【内容】
・ごみ拾い活動を通して、どの様なごみが多いのか調査および分析する。
・調査活動の感想を書く。

◇ごみ拾い活動では、拾いながらごみの種類と数をカウントする方法を用い、専用の調査用紙に実態を記入していく。
◇実施者側が調査用紙を用意し、子ども達が楽しめる様に配慮する。また、地域の実態に即して学校独自で作り替えることも可能である。
◇拾ったごみの集計および分別を通して、誰がどの様なごみを出しているのかを分析する。
◇単に「ごみを拾う」だけではなく、それを調査化することで、リアルな地域の実態を知る。
◇感想を書くことを通して、自らの考えを整理させる。また、実践者側は児童の思いを知る。
6・7時間目ごみが減る方法を考えよう。
【地域環境計画の作成】
・子ども達自身の目線でごみを減らす対策を考える。
【内容】
・調査活動の結果をふまえて、ごみを減らす対策を考える。
・無理して行うのではなく、「毎日、誰でもできる」対策が、継続出来る対策であることを認識する。
◇実施者側はワークシートや教室内に前時学習の様子を掲載し、子ども達がふりかえりやすい学習環境を整える。
◇実施者側はワークシート記入時に机間巡視を行い、類似の内容があるか否かを把握する。
◇類似内容同士で班を作り(実施者)、内容毎の環境計画を作成する。
◇過去の例として「タバコの吸い殻が多かったので、ポイ捨てをしないように呼びかける紙を配る(企業とも協力し、携帯灰皿を提供する)」や「弁当容器が多かったので、13時前にごみ拾いを行う姿を見せ、あいさつを行うことで良心に訴える」などのアイデアがあった。
◇「ごみ箱を設置する」という意見が出がちだが、その場合、後始末は誰がするのか、他の人がごみを持ってくる可能性があるなど、具体的な理由を説明し、その意見に偏らないように注意する。
8時間目考えた対策を実践してみよう
【地域環境保全主体としての活動】
・対策を実施する。
【内容】
・環境計画をもとに当事者と共にごみを減らす対策活動を実施する。
◇子ども達が主体的に活動を行うことで、地域の環境を「誰かが守っている」ではなく、「自分達で守る」という意識が育まれるようにする。
9・10時間目ごみが減ったか調べてみよう
【地域環境保全主体としての活動】
・結果をみてふりかえる。
【内容】
・対策を行った地域をパトロールし、ごみの量の変化を調査する。
・調査結果に基づき、新たな地域環境計画を作成することで、「調査」→「対策」を継続化する。
◇パトロール実施地域の現状をみる「再調査」を行うことで、子ども達自身の「対策」内容について省察する。
◇加えて、結果を基に新たな「対策」を考え、実行する。
◇一連の流れを通して、子ども達自身が「自分が地域環境を守る主体である」ことを自覚する。
11・12時間目どのような大人になりたいかを考えよう
【事後学習】
・学習内容をふまえて、どういう大人になりたいか考え、発表する。
【内容】
・学習内容をまとめる。
・「実態」「地域の理想の姿」「そのために何が出来るのか」を報告する。
◇まとめの内容は、「①何を知ったか、②何ができたか、③何ができなかったか、④今後は何を知り、何を行いたいか」を明確にする。
◇指導者は、「人間は考え方ひとつで『捨てる人』にも『捨てない人』にも『拾う人』にもなれることを説明し、どのような方法なら自分たちが『拾う人』や『捨てない人』になれるかを考えさせる。
◇他者に伝える方法を模索することで、未来へと引き継いでいく術を身につけていく。【伝達】
◇保護者や地域住民の方々への成果報告を通して、子ども達自身が「自らが地域を担っていく主人公である」という自覚と責任感を芽生えさせる。【未来】

● その後の展開例等

  • 毎年、決まった学年で行っていくことで、数年前との比較が行え、成果が見やすくなる。
  • ごみを拾い減らすことを考えるきっかけをつくり、その後、遠足などでリサイクルセンターなどに行くことで、ごみ分別の重要性を考える事もできる。

● 地域で実践するときの補足情報

  • くすの木自然館が行ける範囲であれば、同様のプログラムを環境教育のプロとして、より専門性を持たせた形で提供する。その際は、交通費と人件費を別途計上。
    くすの木自然館
  • 近くに、実践者がいない場合は、ごみ処理センターの職員やリサイクルセンターの職員、ごみ拾いボランティアの方々などと協力することも可能。
  • 専用調査用紙は、実施者が事前にフィールドを見て回り、多いことが予想されるごみのみを項目の欄にあげ、残りは手書きで足していけるようにする。(下表参照)