● 目標 | ①人間の日常の暮らしは、あらゆる生き物と共存していることに気付き、その生き物の立場になって考えることで「命の大切さ」を学ぶ。 ②世界中で人間が引き起こしている環境破壊により、多くの生き物が絶滅の危機に瀕していることを題材に、その要因や各問題を多面的に理解する。 ③世界に目を向け、人間と生き物が共に平和に暮らすためには、何が問題か、何が大切かを整理し見直すことで、今後の環境に配慮した持続可能な社会の在り方を考え、問題を解決しようとする人材の育成を目指す。 ④参加児童が、プログラムの成果を家族や地域と共有することで、持続可能な地域社会の形成や継続的な環境保全に向けた一歩を踏み出す。 |
● 概要 | 21世紀に入ってもなお、世界では自然環境の荒廃、地球温暖化による異常気象、生態系破壊等の様々な問題が存在する。この多様な問題の解決には、自ら課題を見つけ、学び、考え、客観的に判断し、協力しながら行動する力が必要である。本プログラムでは、世界中で拡大している森林伐採等の環境破壊で影響を受けている生き物の中から、絶滅危惧種のオランウータンを題材に、人間と生き物の関係を理解し、持続可能な社会はどうすれば実現できるのかを学ぶ。海外の環境問題に対し、日本にいる自分たちができること、豊かな自然と生き物を守る為の仕組みの構築を考え、将来目指すべき地球の姿や社会の実現に向け、主体的に取り組む力を習得する。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校6年 | 理科 | 2 B 生命・地球 (3)生物と環境 生物と環境について,動物や植物の生活を観察したり資料を活用したりする中で,生物と環境との関わりに着目して,それらを多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (ア) 生物は,水及び空気を通して周囲の環境と関わって生きていること。 (イ) 生物の間には,食う食われるという関係があること。 |
小学校6年 | 社会 | 2 (3)グローバル化する世界と日本の役割について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活は,多様であることを理解するとともに,スポーツや文化などを通して他国と交流し,異なる文化や習慣を尊重し合うことが大切であることを理解すること。 (イ) 我が国は,平和な世界の実現のために国際連合の一員として重要な役割を果たしたり,諸外国の発展のために援助や協力を行ったりしていることを理解すること。 (ウ) 地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめること。 |
小学校5〜6年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
マレーシアの森を伐採した場所から収穫されたパーム油は,日本をはじめ世界へ輸出されていることを知る。 | |
森林伐採等の影響を受けたオランウータンを題材に人間と生き物の関係を理解し,持続可能な社会の実現を考える。 | |
世界の環境問題が自分の生活とつながっていることをグループで話し合いながら,幅広い考え方を身につける。 |
● ESDの要素
ゲームを通し、生態系は様々な生き物がお互いに関わりあって成り立っていることを学び、生命を尊重する態度を養う。 | |
生き物と人間のつながりを学び、限りある資源を共有しているという自覚を促す。 | |
これまでの生活を見直し、実践することで個々の役割と責務を自覚し、進んで参加する姿勢を身につける。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1・2時間目 | 〈ゲームをしながら、動物の気持ちを考えよう〉 ゲームを通じて、動物の気持ちになってみよう(シンパシー WS) | |
グループごとに人間と動物に変身し、エサ取りゲームを体感する。自分が食べられるものを神経衰弱のルールを利用して順番に取りながら、人間の理不尽さについて体感する。 | ①参加児童が地域で保護活動をしている生き物や内容について共有する。 ②相手(動物)の気持ちになって考え、シンパシー(共感)を得ることを大切にするゲームであることを伝える。動物、人間役が立場によって感じ方が異なることを、児童が気付き、ゲームの中でそれぞれどんな気ちになったかをワークシートへ記入し、共有する。 ③ゲーム内のブラックカードとは何か(例:森林の開拓、道路や工場の建設等)を考える。 ④汚染された空や海、川、森林伐採について知り、ゲームの内容が現実に起こっていることだと気づかせる。 〔ゲームカード・ワークシート〕 | |
3・4時間目 | 〈マレーシアの環境問題について考えよう〉 マレーシアってどんな国?~調べてみよう | |
マレーシアの文化、食生活、自然環境や世界との関係性などを調べ、模造紙にまとめる。 | ①マレーシア留学生からの自己紹介。(出身州、人種構成等) ②図書、文献やインターネットを利用して、グループ学習でマレーシアについてテーマを決め、環境や文化について調べ、図やイラストを用いて発表する。 ③留学生からの発表に関するコメントや回答を受ける。 〔図書・文献、インターネット、模造紙、マジックペン〕 | |
5・6時間目 | 〈絶滅しそうな生き物のために自分たちができることについて考えよう〉 世界でおこっている現実 絶滅危惧種・オランウータンから学ぼう | |
マレーシアのオランウータンが森林伐採により生息地を失い、絶滅危惧種となった経緯(なぜ・どのように・何の為に)を知り、考える。 | ①マレーシアの気候風土の特徴や、昔は、たくさんのオランウータンが森林でゆったりとくらし、人間も森林から恩恵を受けながら互いに共存してきたことを知る。 また、 過去100年間で92%も絶滅した原因や現在の個体数等について学ぶ。 ②平和に暮らしていたオランウータンの森を人間が伐採し、アブラヤシプランテーションとしている事。そこから収穫されたパーム油は日本国内でもスナック菓子や石鹸製品等多岐にわたり使われ、スーパーの棚の半数に及ぶ商品に関係していることを学ぶ。 ③マレーシアの留学生から、自国への想いやボルネオ島の環境問題についての発表。 ④人間と生き物の関係について考えたことを共有する。 〔ワークシート〕 | |
7・8時間目 | パーム油を通して社会のルールを考えてみよう | |
世界のパーム油について生産量等の現状と人間生活での必要性について学び、自分たちのできる事を考え、話し合う。 | ①世界や日本のパーム油市場について理解し、熱帯雨林は日本から遠いところにあるが、私たちの生活との結びつきはとても強いことを学ぶ(あらゆる商品の原材料)。 ②世界の動向から環境への影響に配慮した持続可能なパーム油を求める声の高まりに応え、WWFが中心となり「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が設立された事について、絶滅危惧種の保護と社会ルールの両立についてDVD等で学ぶ。 ③持続可能な社会のしくみの構築についてのワークを通し、パームオイルの入った製品を使わない、違うレシピを考える等、多様に自分のできることを見つけ、成果を発表し共有する。 〔データ資料、原材料にパーム油が記載されている石鹸や菓子等商品、RSPO-DVD〕 | |
9・10時間目 | 世界中とつながっている私たちの生活!できる事って何だろう? | |
今までの授業を通じて学んだ事について、世界とどのように繋がっているのかをグループ内で話し合い模造紙に纏める。 | ①グループワークで絶滅危惧種のオランウータンのほか、マレーシアや身近で起こっている環境問題に関する課題について考え、自分たちの生活がすべてに関連していることを意識する。 ②「世界との繋がり」をグループ発表した後、質問を受けることによって、より考えを深める。 ③「自然を壊してしまうのは人間だが、自然を守ることができるのもまた人間である」という事を学び、持続可能な未来の地球について幅広い考え方を身に付ける。 ④自分の地域での絶滅危惧種保護活動についても、改めて話し合い共有する。 〔模造紙、付箋、マジックペン〕 | |
11・12時間目 | 〈自分たちの地域にすむ生き物について考えよう〉 地球の仲間たちの声を聞こう! | |
体験講座を通じて世界や地域の絶滅危惧種について知り、学んだ事を基に将来の地球の姿や目指す社会について考える。 | ①森山動物園にて絶滅危惧種について学ぶ。 ②特に地域にいる絶滅危惧種については、その理由や解決方法等について具体的に学び、何をすべきかを考える。 |
● その後の展開例等
- 現在世界中で起こっている環境破壊や課題解決へ向け、様々なテーマを題材に継続的に展開可能である。
- 本プログラムは、中学生や一般向け講座等へも需要があると考える。
● 地域で実践するときの補足情報
- カードゲームに関する情報
- 留学生についての留意事項
①留学生に関する情報は、大学や工業高等専門学校、JICA地域デスク等から協力を受け参加を募った。
②授業参加にあたっては、授業内容の事前共有と言語(日本語力)についての確認をした。
※第2回目の授業から留学生が参加することにより、大変な人気で子どもたちが前向きに積極的に考える効果が見られた。 - 11・12時間目の動物園訪問に関する代替リソース案
地域ごとのレッドデータブック等を参考に、里山や湖沼、河川等でのフィールドワークを実施可能