さまざまな視点から水について考えよう
〜水の総合学習プログラム〜

このプログラムは、 「教育開発研究会」のプログラムを基にしています。

● 目標①水に関する様々な環境問題に取り組み、問題解決力を育成する。
②水に関する横断的・総合的な学習を通して、生徒が自ら考え、自ら学び、主体的に判断し、よりよい地域づくりのために問題を解決する資質や能力・態度を育成する。
③主体的な学び方や、問題解決能力を身に付け、水に関わる問題に主体的、協働的に取り組む態度を育て、地域の中での自己の役割を考えることを促す。
● 概要水に関する体験的な学習を行い、横断的・総合的に学ぶことを通じ、水にかかわる循環・防災・利用・問題等の事象に主体的に取り組む態度を育む。また、身近な衛生や生活に結びつけ、水を取り巻く様々な課題に対する対策を考える。
そして、自分たちの住んでいる地域の水を取り巻く問題を発見し、グループ学習により、よりよい地域づくりのために問題を解決し、進んで地域づくりに参加する態度を育成する。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
中学校1〜3年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。
中学校1〜3年社会(地理的分野)2 C 日本の様々な地域
(2)日本の地域的特色と地域区分
次の1から4までの項目を取り上げ,分布や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,以下のア及びイの事項を身に付けることができるよう指導する。
1 自然環境  2 人口  3 資源・エネルギーと産業  4 交通・通信
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 日本の地形や気候の特色,海洋に囲まれた日本の国土の特色,自然災害と防災への取組などを基に,日本の自然環境に関する特色を理解すること。
イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ア) 1から4までの項目について,それぞれの地域区分を,地域の共通点や差異,分布などに着目して,多面的・多角的に考察し,表現すること。

(4)地域の在り方
空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識を身に付けること。
(ア) 地域の実態や課題解決のための取組を理解すること。
(イ) 地域的な課題の解決に向けて考察,構想したことを適切に説明,議論しまとめる手法について理解すること。
イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ア) 地域の在り方を,地域の結び付きや地域の変容,持続可能性などに着目し,そこで見られる地理的な課題について多面的・多角的に考察,構想し,表現すること。
中学校1〜3年保健体育科(保健分野)2 
(1)健康な生活と疾病の予防について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 
ア 健康な生活と疾病の予防について理解を深めること。
(オ) 感染症は,病原体が主な要因となって発生すること。また,感染症の多くは,発生源をなくすこと,感染経路を遮断すること,主体の抵抗力を高めることによって予防できること。

2 
(4)健康と環境について,課題を発見し,その解決を目指した活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 健康と環境について理解を深めること。
(イ) 飲料水や空気は,健康と密接な関わりがあること。また,飲料水や空気を衛生的に保つには,基準に適合するよう管理する必要があること。
(ウ) 人間の生活によって生じた廃棄物は,環境の保全に十分配慮し,環境を汚染しないように衛生的に処理する必要があること。
中学校3年理科(第1分野)(第2分野)第1分野 2 (7)科学技術と人間
ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 
㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用
自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。

第2分野 2 (2)大地の成り立ちと変化  
ア 大地の成り立ちと変化を地表に見られる様々な事物・現象と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(エ) 自然の恵みと火山災害・地震災害 
㋐ 自然の恵みと火山災害・地震災害
自然がもたらす恵み及び火山災害と地震災害について調べ,これらを火山活動や地震発生の仕組みと関連付けて理解すること。

第2分野 2 (7)自然と人間
ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 
㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用
自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,持続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。

● SDGsの要素

世界の水に関わる病気について知り、水の衛生や病気の予防の重要性を理解する。
水に関する体験的な学習を行い、水の循環や利用、その問題を考える。
河川での災害や治水など、自分の住む地域の水に関する問題や歴史を学び、地域づくりに参加する。

● ESDの要素

地上に流れている川の水は、その恵みで生活が豊かになる面もあれば、時には渇水や洪水等の災害をもたらすこともあり、流域に住む人々の生活と多様な関わりがあることを理解する。
私たちが利用できる「水」は上手に使わないと不足することもあり、地球全体の水の中ではほんのわずかであることを理解し、大切に使っていく態度を養う。
地上に流れている川の水は、流域に住む様々な人々にとって必要不可欠な資源であるが、不確実で繊細な一面を持っており、時には災害をもたらすことを学び、人々が連携してその対策に取り組んでいることを理解する。

● ESDの能力・態度

人間の水利用やゲリラ豪雨への対策を考えることで、地球上の水問題に対してそれを解決する未来像を考えることができる。また、地域の水に関する問題を発見し、それを解決する未来を考えることができる。
水の問題を様々な視点から理解し、その解決法を、多面的、総合的に考えることができる。
地域の水問題に関する活動や実験に対し、友だちと協働することに加え、地域の人々とも協力しながら取り組むことができる。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

12時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目地球上の水(※1)
・地球上の海と陸の比率を知る。
・水は様々な状態にあること、水の移動経路は単一ではなく移動しながら重要な役割を果たしていることを理解する。
・地球上の水の中で人間が使える水(淡水)はごく一部であることを知る。
◇地球儀型のビーチボールや、サイコロを使ったゲームなどを用いてわかりやすく説明する。
〔地球儀型のボール、サイコロ〕
◇気象や水循環の分野に詳しい外部講師が直接指導に当たるか、事前に専門家のアドバイスを受けて実施することが望ましい。
2時間目水の実験(※2)

・水の物質的特性である表面張力について体験的に学ぶ。
・軟水と硬水を様々な方法で比較することで学びを深める。
・水質パックテスト等の教材を使用し、水質化学実験の楽しさを体験的に学ぶ。

◇理科室での実施が望ましい。
◇水質化学の分野に詳しい外部講師が直接指導に当たるか、事前に専門家のアドバイスを受けて実施することが望ましい。
3時間目人間の水利用(※3)
・人間は川の水をどのようなことに使っているのか意見を出し合う。
・一本の川が流域全体の人々の生活を支えていることを学ぶ。
・渇水が発生したとき、流域に暮らす人々の生活にどんな支障があるのかを話し合う。
・渇水問題を解決する方法を出し合う。
◇1時間目を振り返り、人間が使える水は淡水であることを確認する。
◇平常時と渇水時の水量を比較することで学びを深める。
◇日々の生活に必要な水資源(水道、農業用水、水力発電、川の生態系等)を関係する人々が話し合って分け合う水利権と渇水調整の大切さに気付かせる。
◇水資源管理や利水の分野に詳しい外部講師が直接指導に当たるか、事前に専門家のアドバイスを受けて実施することが望ましい。
4・5時間目水からの防災(※4)
・どんな時に川の水が増水するかを出し合う。
・自分たちが住む地域の地図を描き、「周りより低いところ」「水が流れていくところ」を予想する。
・その地域の実際のハザードマップと比べ、ゲリラ豪雨が来たときの地域の水害危険個所を理解する。
・危険個所に対し、安全な場所はどこか、逆転の発想で明らかにし、生徒個々人のマイ・ハザード・マップを作成する。
・ICTを活用し、河川情報システムから現在の河川情報を確認する。
・ゲリラ豪雨が起こった時の対処の仕方を話し合う。
◇ゲリラ豪雨の被害について知らせる。
(平常時と出水時の河川の写真・映像資料等を比較する)
◇生徒が住む自宅から学校までの通学路上の水害危険個所を理解させ、自主的に避難する大切さを考えさせる。
◇河川情報システム等のICTの活用により、ある程度河川の状況を把握することができるが、その限界や停電等のリスクもあることを知らせる。
◇水防災や治水分野に明るい者が直接指導に当たるか、事前に専門家のアドバイスを受けて実施することが望ましい。
6時間目水の衛生管理(※5)
・過去に世界的に流行した病気を出し合い、なぜそれらの病気が広がることになったのか考える。
・水によって伝染する病気があることを知る。
・病気が広がらないようにするには、感染経路を遮断することが大切であることを理解する。
・水の衛生と予防の大切さを学ぶ。
◇飲料水などを衛生的に保つために、法律に基づいた基準があり、その基準に適合するよう管理する必要があることを理解させる。
◇医療・保健衛生の分野に明るい者が直接指導に当たるか、事前に専門家のアドバイスを受けて実施することが望ましい。
7~10時間目地域の水問題に取り組む
・ハザードマップチーム・衛生管理チーム・環境改善チームに分かれ、地域に問題がありそうなところをピックアップする。
・現地に出かけ、実態を調べる。
・地域の方々やNGOなどへの取材も取り入れる。
・現状の問題点・解決に向けた対策を話し合いまとめる。
・発表会の準備をする。
◇1チーム4〜8人で構成する。
◇「だから、何なのか?それで、どうするのか?」という問いかけを重視し、論理的に思考を追求する力を養う。
◇本時までの学習内容・方法を生かせるようにアドバイスする。
〔グループ討論・グループワーク〕
11・12時間目地域の水問題の発表会を行う
・グループごとに調べた結果や将来展望を発表し合う。
・別のグループの発表を評価し合う。
・地域住民の方や行政の方々も招待する。
・これまで学んだ事を総括しながら、自分たちの地域の水環境の今後を考える。
◇いくつかの有意な提案に対しては、「本当にそうなのか?できるのか?やったら上手くいくのか?試しに今やれることはないか?」を議論し、自分たちで実践して体験し学びを深めることが望ましい。
〔グループ討論・グループワーク〕

● その後の展開例等

  • プログラムの効果についてのさらなる知見を実践の中から蓄積し、改善を図る。

● 地域で実践するときの補足情報

  • プログラム所有団体が提供できるリソースやその条件教育開発研究会では札幌を拠点に指導者養成講習会(プロジェクトWETエデュケーター講習会)を開催し、指導者の育成やアドバイス、直接的指導を行うことが可能である。
  • プログラム所有団体がかかわらない場合の代替リソース案直接指導に当たる者は、プロジェクトWETの資格を取得することが効率的であり、望ましいと考えられることから、各地で開催されるプロジェクトWETエデュケーター講習会に参加することで授業の構成や教材作成に必要な情報を得ることが可能である。
  • 地域色が強いプログラムの、他の教材での展開可能性など「木曽川流域版ガイドブック」の展開事例があるので参照。

1 プロジェクトWETアクティビティ「青い惑星」及び「驚異の旅」、「大海の一滴」を利用することができる。
2 プロジェクトWETアクティビティ「水リンピック」を利用することができる。
3 プロジェクトWETアクティビティ「水差しを回そう」を利用することができる。
4 プロジェクトWETアクティビティ「マイ・ハザード・マップ」を利用することができる。
5 プロジェクトWETアクティビティ「殺人鬼は誰だ?」及び「名探偵」を利用することができる。
6 プロジェクトWETアクティビティ「水資源保護をめぐって」「水の神経衰弱」「この汚染物の発生源は?」を利用することができる。