森林プログラム(いなぎの森100年プロジェクト)

このプログラムは、「東京都稲城市立稲城第一小学校」のプログラムを基にしています。

● 目標①木について学んだり調べたりすることから、自然の素晴らしさや自然の大切さに気付く。
②木の炭素固定量を調べることで、木は地球温暖化防止に大切な役割があることを理解する。
③学校や地域の木を調べることで、積極的に地域の自然を守り・育てなくてはいけないという意識を持ち、そのために必要な思考力・判断力等を育む。
④学校や地域の木について地域に発信することで、「自分のできることから行っていこう」とする意欲を育てる。
● 概要木を中心テーマとして、木について知る活動や、木の光合成による炭素固定を調べることで、木は地球環境にとって大切な役割があることを理解する。また、学校や地域の木について調べ、地域の人たちにその大切さや役割を発信することで、地域環境に興味を持ち、地域の自然を守ることの大切さや困難さ、自分たちでもできることがあることなどを知り、自然と人間の共存について考える。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
小学校5〜6年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。
小学校6年理科2 B 生命・地球
(2)植物の養分と水の通り道
植物について,その体のつくり,体内の水などの行方及び葉で養分をつくる働きに着目して,生命を維持する働きを多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 植物の葉に日光が当たるとでんぷんができること。 
(イ) 根,茎及び葉には,水の通り道があり,根から吸い上げられた水は主に葉から蒸散により排出されること。 

2  B 生命・地球
(3)生物と環境
生物と環境について,動物や植物の生活を観察したり資料を活用したりする中で,生物と環境との関わりに着目して,それらを多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。 
(ア) 生物は,水及び空気を通して周囲の環境と関わって生きていること。
小学校5〜6年道徳2 D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
 [自然愛護]
自然の偉大さを知り,自然環境を大切にすること。

● SDGsの要素

炭素固定量の調査から,地球温暖化防止に役立つ木の役割を理解する。
学校や地域の木を調べることで,積極的に地域の自然を守り,育てなくてはいけないという意識をもつ。
友達や教職員・地域の人などと協力して,よりよい環境を作り出そうとする意欲をもつ。

● ESDの要素

木を調べることから、木は水や二酸化炭素など多くの物質と関わりをもっていることを知り、私たちの住む環境は多様な物質と相互に関わりあっていることを理解する。また、友達と協力して調べ学習をし、地域の人たちと関わる活動をすることを通して、人間も相互に関わりあうことが大切であることを理解する。
木の炭素固定量を測定し、地球温暖化の原因とされる空気中の二酸化炭素が、木によって空気中から減らされ固定できることを知り、地球上の物質は有限であり、それが循環していることを理解する。
学校や地域の木を調べることによって、自分の生活する地域にある自然の大切さを理解する。その調べた結果や思いを地域に発信することで、自然環境を守る責任は自分たちにあることを実感する。

● ESDの能力・態度

自分たちが学んだことや調べたことを整理し、パワーポイントの作品にすることで、自分の考えを簡潔にまとめ、わかりやすく説明できる能力につながる。
グループで協力して行う体験学習や探求学習で友達と協力する大切さを体感できる。また、学校や地域の人たちに協力してもらう学習をすることで、協力してよりよい環境を作り出そうとする姿勢を養うことができる。
生き物は多くの物質と関連して存在していることを知り、環境の大切さを理解する。また、自分自身も友達や教師・地域の人などと関わりながら生活していることを理解する。

● プログラム(単元・題材)の展開の流れ

11時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1・2時間目木を感じるゲームをしよう
○木からできているものクイズを行う。
○木と草の違いは何か考える。
○森の中での活動を行う。
・カモフラージュのゲームをする。
・目隠しをして木に触れ、木を感じ取るゲームをする。
◇木からできているもの・できていないものをたくさん並べ、木からできているかどうかを当てさせる。
〔木からできているもの・いないもの10 ~ 20個〕
◇木と草の違いをきっかけに、森林を構成する木についての理解を深める。
◇木の近くにいろいろな人工物を隠しておき、それを見つけさせる。グループ対抗戦にしてもよい。
〔自然に溶け込む人工物20個くらい〕
◇目隠しをするときは、二人組以上にして、ゆっくり歩き転ばないよう注意するように指導する。
〔目隠し〕
※1
3~5時間目光合成を調べてみよう

○木の仕組みを知り、光合成について学び、光合成に必要なもの・できるものを理解する。
・植物の葉の日光が当たったところだけにでんぷんができることを実験で確かめる。
・みんなで木のそれぞれの部分になり、一本の木を表現する。
○学校にある木を決め、木の一年間の炭素の固定量を調べる。
・胸高直径を測る
・木の種類を調べる
○地球環境と木の役割について考える。

◇木は、樹皮・師部・形成層・辺材・心材・根・葉でできていてそれぞれに役割があることを知らせる。
◇光合成は、光のエネルギーにより、水と二酸化炭素から養分と酸素を作り出すことを理解させる。
〔アルミホイル・シャーレ・よう素液〕
◇木の部分(樹皮・師部・形成層・辺材・心材・根・葉)の役割を考えながら、表現させる。
〔役割カード〕※2
◇木の1年間の炭素固定量は、胸高直径と樹種から算出させる。※3
〔ワークシート・図鑑〕
◇地球温暖化に二酸化炭素が影響していることを知らせ、そこから地球温暖化と木の役割について考えさせる。
6~9時間目地域の木を調べてみよう
○学校や地域の木について調べる視点を出し合い、自分たちで調べたい課題を発見する。
○グループごとに自分たちで木の課題について調べる。
○調べたことをパソコンのスライドショーで発表する準備をする。
・地域や学校の環境改善へのメッセージを入れる。
◇考えられる視点
「校庭の樹木マップを作る。」「学校の樹木の炭素固定量調べ」「地域で一番太い木の炭素固定量調べ」など
◇今までに習ったことを活かしたり、新たな視点で調べることに挑戦したりさせる。
◇スライドショー作成用にグループに一台デジタルカメラを持たせて調べさせる。
〔バインダー・デジタルカメラ・パソコン・地図など〕
10・11時間目木の大切さを知らせよう
○地域の人を招いて、スライドショー発表会を行い、学校や地域の木の大切さを知らせる。◇地域の人たちからの感想や意見も話してもらい、地域の今後を考えるようにする。
〔パソコン・スクリーンなど〕

● 地域で実践するときの補足情報

※なお、プログラムのモデル化に当たっては、木に関する体験とそれをまとめる学習であったので、自分たちで学校や地域を調べる学習・地域への発信の部分を加えて修正するなどの工夫を行った。
※ 木や環境学習の専門家と協力しながら進めることが望ましい。本校は東京農工大学佐藤教授の指導の下で実践を行った。
※1・2は、PLT(プロジェクト・ラーニング・ツリー)の「木は工場」などを使うとよい。
※3 国土交通省 国土技術政策総合研究所防災・メンテナンス基盤研究センター 緑化生態研究室