脱炭素教材 授業展開例

<中学校>※板書例やワークシート内の素材は、自由に流用いただけます。

● はじめに

気候変動問題をはじめとした地球環境問題は、世界全体の喫緊の課題となっており、我が国でも2050 年までに脱炭素社会の実現を目指すこととされるなど、気候変動対策を進めています。
脱炭素社会の実現に向けては、国民一人一人のライフスタイルを脱炭素型へと転換していくことが重要であり、持続可能な社会の創り手となることが求められる子供たちが、地球環境問題について理解を深め、環境を守るための行動をとることができる資質・能力を育成していくことが重要です。

● SDGsの要素

再生可能エネルギーのメリット・デメリットを理解し、二酸化炭素排出量を減らす新しい技術について調べる。
カードゲームを考えたり、炭素循環を理解したりしながら、脱炭素社会に向けた新しい解決策を話し合う。
地球温暖化の原因やカーボンニュートラルについて学び、二酸化炭素排出量を減らす行動を検討する。

● ESDの要素

地球温暖化によって起こりうる天候の変化や災害などを理解し、多くの人と解決策を考える必要性を認識する。
脱炭素社会への理解を深め、地球温暖化を防ぐことと幸せな暮らしを両立する方法を考える。
COP26などの解説をはじめ、世界でカーボンニュートラルへ取り組む大切さとその課題を理解する。

● ESDの能力・態度

カーボンニュートラルを実現するために、説得力のある広報パンフレットを工夫して作成する。
二酸化炭素が減らせなかった場合のシナリオを考え、動植物への影響についての理解を深める。
電気自動車や再生可能エネルギーの技術、木材の活用など、多様な地球温暖化対策について調査する。

授業展開例

● <1ユニット,1コマ> 二酸化炭素復習,二酸化炭素を出す人間活動

5分<課題>地球温暖化とは何か。
5分(動画)「何が起こったの?」
10分発問「動画を見て、どんなことがわかりましたか」
<予想される意見>
・未来の気温が上がっていた。
・二酸化炭素が地球が暖かくしてしまう。
・電気を使っても二酸化炭素が出る。 など
5分(動画)「二酸化炭素のはたらきは?」
5分二酸化炭素の年間排出量や二酸化炭素をたくさん出す活動(化石燃料を燃やす活動)を解説する。
・ガソリン車 ・火力発電
10分発問「地球温暖化とはどのようなことですか。下級生に伝えるつもりで説明しましょう」
二酸化炭素が増えて地球が暖かくなることを、図を使ってまとめさせる。
「たとえ」や数値を使うことなどを助言する。
熱と二酸化炭素の区別がつくように、板書で図とともに説明する。
※オゾンホールによって温暖化が起こるとの誤解もあるため、この点を取り上げてもよい。
5分<まとめ>上記を確認する。
※二酸化炭素は身近であり、悪い物質ではないこと。増えすぎるから困る、というバランスの問題であることを強調する。
※「二酸化炭素を増やさないようにしたい」という気持ちを持たせるようにする。

● <2ユニット,1/2コマ> 地球温暖化への対策を考える

5分1ユニットの復習をする。
今日の流れの説明をする。
5分(動画)「できることは何だろう」
10分動画を見て、わかったこと・感想などを発表する。
<予想される意見>
・地産地消は温暖化対策にもつながる。
・電気自動車のしくみを知りたい。
・再生可能エネルギーはどのくらい効果があるのか。 など
15分発問「再生可能エネルギーは、どのような発電のしくみなのでしょうか。なぜ二酸化炭素排出量を削減できるのでしょうか。」
水力発電・太陽光発電・風力発電のしくみを解説する。 なぜ二酸化炭素排出量が削減できるのかと各発電方法の課題をおさえる。
10分思ったこと、わかったことなどを発表する。

● <2ユニット,2/2コマ> 地球温暖化への対策を考える

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
10分ニュースなどをもとに、実際に世界で起こっている温暖化の影響を紹介する。NHKニュース
10分発問「地球温暖化のために、一人ひとりができることは何でしょうか」
<予想される意見>
・節電をすれば、あまり二酸化炭素は出ない。
・二酸化炭素を出さない車を発明すればいい。
・植物を増やし、植物に二酸化炭素を吸収してもらう。など
15分発問「最近の新しい技術では、どのように二酸化炭素排出量を削減しているのでしょうか」
ハイブリッド自動車、電気自動車など、新しい技術を紹介する。
実用化はされていない技術(例えば地層封入のしくみ)などを取り上げてもよい。
5分思ったこと、わかったことなどを発表する。

● <3ユニット,1> 地球温暖化対策がうまくいかなかったとしたら

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
35分発問「二酸化炭素が減らせなかった場合のシナリオを考えましょう。地球でなにが起こってしまうでしょうか」
グループで、図書館やインターネットを使った調べ学習を行う。
理科的、社会的な両方の面から考えさせる。
<例>
・絶滅する動物がいる→増える動物もいる→生態系のバランスが崩れる
・災害がふえる→作物が取れない→飢餓・貧困などの問題が起こる→社会が不安定になる(犯罪が増えるなど)
※グループごとの考えたシナリオの発表会(1時間)を実施することも考えられる。
5分温暖化が進むと、動物、人間、植物が困ることをまとめる。 感想を発表する。

● <4ユニット,1/2コマ> 二酸化炭素を取り除く方法,カーボンニュートラル

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
5分(動画)「自然の力を借りる」
10分発問「動画を見て、どんなことがわかりましたか」
<予想される意見>
・急いで解決しなければならない。
・海水も二酸化炭素を吸収するが、減らすことはできない。
・木材の利用も効果がある。
20分地球、海、木のはたらきを簡潔にまとめる。
毎年、植物や海が吸収している二酸化炭素排出量を具体的に提示する。
自然のしくみとともに、炭素の循環を理解させる。
※炭素循環ゲームで理解を深める。
5分思ったこと、わかったことなどを発表する。

● <4ユニット,2/2コマ> 二酸化炭素を取り除く方法,カーボンニュートラル

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
10分発問「カーボンニュートラルとは、どういうことですか」
図を使って説明する。
プラスマイナスゼロということをおさえる。
25分発問「カーボンニュートラルを理解するためのカードゲームを考えましょう。」
生徒が実際にやってみる授業(1時間)や、ゲームの工夫した点を発表する会(1時間)などを設定してもよい。
5分授業の感想を発表する。
世界の人が力を合わせること、新しいアイデアを考えることなどの重要性を理解させるようにする。

● <5ユニット,1コマ> COP26の紹介

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
35分2021年10月31日からイギリスで開かれたCOP26について解説する。
<例>
・平均気温の上昇を「1.5度」に抑えることを、参加国が一致
・各国の排出量の「削減目標」2019年の各国の温室効果ガスの排出量:中国140億トン、アメリカが65億トン、日本が13億トン
・世界と日本の森林の保護状況
・日本の石炭火力発電

※新聞やインターネットを使った調べ学習にしてもよい。
5分思ったこと、わかったことなどを発表する。

● <6ユニット,1コマ> 脱炭素への取り組みへの問題点

5分前時までの復習をする。
今日の流れの説明をする。
10分発問「世界での脱炭素への取組には、どのような課題があるでしょうか」
・脱炭素だと考えていたら、二酸化炭素を排出
・経済的な問題  
(化石燃料を輸出している国、発展の遅れている国への抑制)
課題に対して、世界で協力するためにどうすればよいかを考え、話し合わせる。
ものごとの一面だけをとらえずに、多角的に考える重要性をおさえる。

発問「一人ひとりが脱炭素社会の実現のために、どのような取り組みができるでしょうか」 ワークシートなどの参考に、取り組みについて話し合う。
30分図書館やインターネットで、二酸化炭素の削減・固定方法について、長所と短所を両面から調べる。
※調べたことを発表する授業(1時間)を設定してもよい。

● <7ユニット,2コマ> 表現・まとめ

85分発問「カーボンニュートラルを実現するには、多くの人に知ってもらうこと、実行してもらうことが大切です。そのためにどのような方法が考えられるでしょうか」

「広報パンフレット」「広報チラシ」を作る。
<テーマの例>
関わっている企業や人の紹介,新しい貯留技術,メタンとその削減技術,牛肉の代替 など
※パンフレットに限定せず、広報の方法自体を考えさせてもよい。  
 ポスターの制作などにすることも考えられる。
※脱炭素作文コンクールも紹介する。
※グループ活動にしてもよい。
作品発表会(1時間)を設定してもよい。 友達の作品についての感想等を交流できる。
5分生徒どうし、作品についてよいところを取り上げる。