ちがう国でも同じこと
このプログラムは、「京都市立久我の杜小学校」(現同市立境谷小学校教諭作成)のプログラムを基にしています。
● プログラムの目標 | タンザニアの食べ物・音楽、数字などの生活や文化を体験的に知り、日本とタンザニアの違うところと同じところを知り、世界にはさまざまな文化があることを気づかせると同時に、自分の住む国や地域にも興味を持たせる。 また、タンザニアで1日に使う水で生活してみることで、タンザニアの水事情を理解し、自分自身の水の使い方をどうするべきかを考えさせる。 |
● プログラムの概要 | 小学校低中学年でESDを行う場合、子どもたちがESDに関わる事象を体験し、そこで感じたり考えたりすることが高学年以降のESD学習の基礎となり、子どもたちの理解や行動に深みを増していくと考える。 ここでは、自分たちと同じ地球上に暮らすタンザニアの子どもたちに焦点を当て、タンザニアの生活や文化を体験することで、自分たちの生活や文化と違うところ・同じところを感じたり考えたりする。 この活動は、世界にはさまざまな文化や生活があることを知り、且つ自分たちの文化や生活に目を向けることにもつながると考える。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校3〜4年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
小学校3〜4年 | 道徳 | 2 C 主として集団や社会との関わりに関すること [伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度] 我が国や郷土の伝統と文化を大切にし,国や郷土を愛する心をもつこと。 [国際理解,国際親善] 他国の人々や文化に親しみ,関心をもつこと。 |
小学校4年 | 社会 | 2 (2)人々の健康や生活環境を支える事業について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 飲料水,電気,ガスを供給する事業は,安全で安定的に供給できるよう進められていることや,地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っていることを理解すること。 (イ) 廃棄物を処理する事業は,衛生的な処理や資源の有効利用ができるよう進められていることや,生活環境の維持と向上に役立っていることを理解すること。 |
小学校3〜4年 | 音楽 | 2 A 表現 (2)器楽の活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 器楽表現についての知識や技能を得たり生かしたりしながら,曲の特徴を捉えた表現を工夫し,どのように演奏するかについて思いや意図をもつこと。 ウ 思いや意図に合った表現をするために必要な次の(ア)から(ウ)までの技能を身に付けること。 (イ) 音色や響きに気を付けて,旋律楽器及び打楽器を演奏する技能 |
● SDGsの要素
開発途上国の生活や文化を体験的に知り,自分の国や地域にも興味をもつ。 | |
トイレなどの違いからタンザニアの水事情を理解し,自分たちの水の使い方について省みる。 | |
世界のさまざまな文化や生活へ興味・関心を高め,グローバル・パートナーシップの基礎を培う。 |
● ESDの要素
タンザニアの食事,音楽,学校などを体験的に学び,世界のさまざまな暮らしを知る。 | |
限られた水資源を工夫して使うタンザニアの知恵に気づくとともに,水の大切さを理解する。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | タンザニアに出会う①〜心〜(絵本から見るタンザニア) | |
・絵本「TIKITI」の読み聞かせから、「1つしかないなら、分け合えばいい」という優しい気持ちに気づく。 | ・絵から、生き物や植物、人の様子などの違いを見つけさせる。 ・タンザニア人と日本人の気持ちの温かさが同じことに気づかせる。 〔絵本TIKITIなど〕 | |
2時間目 | タンザニアに出会う②〜国〜(タンザニアに行ってみよう) | |
・タンザニアへGoogle Earthで飛び、遠い国だと知る。 | ・タンザニアにも都市と村があることに気づく。 ・日本との生活環境の違いに気づかせる。 ・次時からの学習につながる問題で、さらにタンザニアに興味を湧かせる。 〔Google Earth〕〔タンザニア○×クイズ〕 | |
3時間目 | タンザニアに親しもう①〜食事〜 | |
・ウガリを目の前で作り、食べて、食の同じところと違いを知る。 ・タンザニアの食事と日本の食事の作法などの違いを知る。 | ・タンザニアには日本と違う食があることを知り、ウガリを食べた感想や食べ方について、日本と同じところ・違うところを意識させて話し合わせる。 〔ウガリ粉(とうもろこし粉)〕 | |
4時間目 | タンザニアに親しもう②〜学校〜 | |
・タンザニアの小学生と同じところと違うところを見つける。 | ・教室の様子や勉強道具の違いを知り、自分の当たり前が当たり前でないところがあることに気付かせる。 ・算数の引き算の問題で、数字や記号が同じをことに気付かせる。一方で、読み方の違いから、言語の違いに気付かせる。 〔タンザニアの学校の写真etc.〕 | |
5時間目 | タンザニアに親しもう③〜音楽〜 | |
・日本とタンザニアの音楽を聴いて、身体でリズムを感じたり歌ったりする。 | ・日本でも親しまれている歌を導入に使う。(幸せなら手をたたこう) ・繰り返し部分の多い曲を選び、親しみやすさをねらう。 〔タンザニアの音楽〕 ・国が違っても音楽に親しむ心は同じところに気付かせる。 | |
6時間目 | タンザニアと私と水①〜トイレ〜 | |
・トイレの違いから、日本の昔を知ったり、タンザニアの水事情に興味を持ったりする。 ・自分たちのトイレの1分間に流れる水の量を目で見て確かめ、多さに気づく。 | ・タンザニアのトイレを再現して、座る方向にも、タンザニアの人の知恵がかくされていることを知らせる。 ・写真から、日本のトイレとの違いを考えさせる。 〔タンザニアのトイレの見本、トイレの写真〕 | |
7時間目 | タンザニアと私と水②〜水不足〜③〜工夫と知恵~ | |
・タンザニアで1日に使う水で1日生活してみることで、タンザニアの人の工夫と知恵を知る。 ・水の大切さについて知り、自分たちはどのように使うべきかを話し合う。 | ・家庭にて、タンザニアで1日に使う水の量での生活体験をさせる。 ・限られたものを工夫して使うタンザニアの知恵に気づき、自分の生活を振り返らせる。 〔水と人びとのくらし(文研出版)etc.〕 | |
8・9時間目 | タンザニアと私たち | |
・学習の中で知ったことや気づいたこと、思ったことを話し合う。 ・それぞれの発表を、日本に住む自分たちと同じところ・違うところの視点でまとめる。 | ・学習前との考えの変化に気付かせる。 ・タンザニア国内には、色々な人たちがいて、その中の一つであることを伝える。 | |
10・11・12時間目 | タンザニアの人に伝えよう〜わたしたちの地域について〜 | |
自分たちの住んでいる地域のことを新聞にまとめて、タンザニアの人たちに伝える。 | ・たくさんの事を知ったタンザニアに愛着を持ち、自分たちの事を伝えたいという気持ちを形にさせる。 ・自分たちの住んでいる地域もタンザニアと同じ観点で伝えられるように、ワークシートを準備する。 〔ワークシート〕 |
● その後の展開例等
- タンザニアから学んだことをもとに、逆に自分たちの住んでいる地域のことをタンザニアにどのように伝えていけるかを考え、子どもたちが作り上げていく展開を期待する。
● 地域で実践するときの補足情報
- 本プログラムは、タンザニアの一カ国に特化した内容となっている。しかしながら、他国(特に開発途上国)の内容で、展開することは十分可能であると考える。その際、注意すべき点として、十分な情報収集および、子どもに偏見を持たせない授業展開の方法が必須である。また、出来るだけ諸感覚を使って体験的に「知る」ことを、まずは大切にしてもらいたい。「知る」ことから、環境教育や途上国への関心や探究へと深まりを増していくだろう。
- 上記に関わり、以下に記すプログラムのご活用を検討いただきたい。
- 世界に出会う!研修員交流
JICAで受け入れている技術研修員と直接交流する機会を提供する。 - 世界を知る! JICA国際協力出前講座
途上国で国際協力に携わってきたOBやOG、JICA専門家や職員が講師として授業を行う。
- 第1時にて使用する教材について
第1時の使用教材「TIKITI」は、一つのものをみんなで分け合えばよいという「国は違っても同じ心」であることと、「見た目や周りの景色の違い」について知ることのできる絵本であると考え、使用している。ただし、日本において購入することが困難であるため、本教材を1冊貸し出しすることを可能とした。(問い合わせ先:前京都市立久我の杜小学校現京 都市立境谷小学校(平成25年7月現在) 下村教諭)
また、上記が手に入らない場合は、以下に記載の絵本を教材として使用されることをご検討いただきたい。
- 「いちばんのなかよし タンザニアのおはなし」出版社:アートン
文・絵:ジョン・キラカ 翻訳者:さくまゆみこ - 「アフリカの大きな木バオバブ」出版社:アートン
文:ミリアム・モス 絵:エイドリアン・ケナウェイ 翻訳者:さくま ゆみこ - 「MasaiandI」出版社:PicturePuffins
文:VirginiaKroll 絵:NancyCarpenter - 「ピカピカ」出版社:偕成社
文・絵:たばた せいいち