里山ビオトープから“いのちの輝き”伝えよう

このプログラムは、「豊田市立西広瀬小学校」のプログラムを基にしています。

● プログラムの目標①環境活動を通して、いのちの尊さと神秘さに気付くと共に、ふるさとに生きる人々や歴史・文化にも関心を広げ、それらの価値を認識した上で、学校内外の人達と連帯して、いのちを大切にし、ふるさとを守っていこうとする意欲と態度を育てる。
ビオトープの整備活動や観察学習を通して、聞く・話す力や共感・尊重する態度を育てる。
③活動に積極的に参加し、学習活動の中で出会う様々な情報をよく吟味して考え、判断する力を付ける。
④河川の中流域をふるさとに持つ者として、環境活動を将来にわたってどう行っていくかを主体的、計画的に考える力と意欲を養う。
● プログラムの概要ビオトープとは、その地域にある在来の生態系そのものを意味するものである。本プログラムは、河川の中流域に位置し、里山に隣接する学校における実践を元に作成したものであり、山・川・休耕田・池など、子ども達が学習活動に携わるフィールド全てを「里山ビオトープ」として捉え、環境教育を実施する。ビオトープの利用は多岐にわたるが、観察会では、自然環境の豊かさを実感し、森の整備活動では、森が生み出す水の役割を体得できる。里山ビオトープでの学びは、すなわちふるさとの価値を発見し、ふるさとへの愛情を育む活動であると言える。この学びを発信し、河川を介した水のつながりの中で、共に高め合うために上・下流域の学校と交流する。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
小学校5〜6年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。
小学校6年理科2 B 生命・地球
(3)生物と環境
生物と環境について,動物や植物の生活を観察したり資料を活用したりする中で,生物と環境との関わりに着目して,それらを多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 生物は,水及び空気を通して周囲の環境と関わって生きていること。
(イ) 生物の間には,食う食われるという関係があること。

● SDGsの要素

干潟・磯で観察学習を行い,自然の豊かさや河川とのつながりを交流学習を通じて理解する。
里山ビオトープから生態系を学び,命の尊さと神秘さを知り,環境保全の心をもつ。

● ESDの要素

水族館や地域の講師など,学校内外の人達と連帯して,ふるさとを守っていこうとする意欲をもつ。
地域の在来の生態系そのものであるビオトープから,生き物の命の大切さを学ぶ。
活動を支援する地域の人や専門家との関わりを通して,コミュニケーション能力を高める。

● ESDの能力・態度

ビオトープの整備活動や観察学習を通して,聞く・話す力や共感・尊重する姿勢をもつ。
ビオトープの観察や人工林の間伐など,体験活動へ積極的に参加しながら自然の豊かさを実感する。
将来にわたって環境活動をどのように行っていくかを主体的,計画的に考える。

プログラム・単元・展開の流れ

12時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1時間目水の循環(森・川・干潟・海)のしくみを学ぼう
・森、川、干潟、海の役割と恵みを知り、「水の循環はいのちの循環」の意味を話し合う。・森の保水作用、腐葉土とフルボ酸、干潟の浄化作用、海の恵みと汚れなど、視覚教材を使って理解を図る。
〔緑の山とはげ山の保水力資料・腐葉土のはたらきの資料・海の魚介類と赤潮の写真〕
2・3時間目里山ビオトープで観察会を開こう

講師を招いて観察会を開く。
・講師の知識や思い、観察技術から学び取る。
・ふるさとの自然環境を知り、その価値を理解する。
・ビオトープの水も川の支流に流れ込むことを捉えさせる。

・子どもたちの観察テーマや興味・関心に基づいて、野鳥班・昆虫班・樹 木班・水生生物班などに班分けしておく。
〔双眼鏡、虫眼鏡、トレイ、ピンセット、ミルソー、捕虫・魚網、カメラ、記録用紙〕
4・5時間目里山ビオトープの人工林を間伐しよう
・森の健康診断をした後、スギ・ヒノキを2、3本間伐する。
・伐倒した木の皮をむき、水分量を実感する。
・木が倒れる時の安全に留意する。皮のむき方を実演し、その要領を伝えて、各々数mずつむかせる。
・森の保水力が川の水を枯れさせないことに気付かせる。
〔ヘルメット、のこぎり、記録用紙〕
6・7・8・9・10時間目河川の終着地である海の干潟・磯に出かけ、上・下流の学校と観察・交流学習をしよう
・干潟・磯で観察学習を行う・上・下流の3学校と打ち合わせをし、干潟で交流学習をする。
・「干潟を守る会」や水族館に講師を依頼し、海の生き物を楽しみながら3校合同で観察できるようにする。
・水槽のアサリが水をろ過する様子を観察することで、干潟の生態系、水の浄化作用などを知らせる。
・各校、各流域の生態系の特徴に合わせた特徴を基にした発表ができるようにする。
・中流域の学校は、休耕田を池に改修して水生生物を増加させたことや人工林を間伐して森の健康度を上げたことを発表させる。今後の抱負なども加えさせる。
〔干潟ビンゴ、水槽、トレイ、虫眼鏡、足洗い用水を入れたペットボトル〕
11・12時間目活動を振り返ろう
・活動を振り返って話し合い、来年度につなげられる項目を下級生に伝える。
・上、下流の小学校の友達に自分たちの思いをまとめ、手紙を出そう。
・これまでの活動を記録した写真を映写して振り返り、感想や反省、意見を出し易くする。
・川を守ることは、上流の森から下流の海まで全てを含んだ環境保全につながることを捉えさせ、今後も継続した活動にしようとはたらきかけるような思いを表現させる
〔プロジェクター、手紙の用紙〕

その後の展開例等

<基礎となる活動>
・生活科・総合的な学習の時間をESDの観点で年間計画に位置づける。その際に、児童の発達段階に応じた環境領域における到達目標・徳目などを明確にしておく。
・全職員が「子どもたちへの相談役」として、「昆虫担当」とか「樹木担当」など、「得意分野」を分担し、子どもたちが見付けてきた昆虫や植物などの同定や図鑑での調べ方などを、一緒に考えるような体制作りをする。
・児童用カメラを教室に準備し、子どもたちが日常的に撮影し、コンピュータ室の自分のフォルダに取り込めるようにする。それを専門機関に送って、種の同定を依頼する。
・ビオトープ内の看板の設置、生き物を呼ぶ施設の整備(ほだ積み、虫宿など)、ベンチの設置、滝や池や木に名前を付ける活動を行い、児童らが改善したり、修繕したりできる環境を整える。
・里山ビオトープの観察会を季節ごとに年4回実施する。「総合学習」の発表会(「中間」と「まとめ」の年2回)を実施し、その成果を次年度につなげられるようにする。観察会や発表会の記録は保存し、毎年累積していく。
・調べた内容やデータは、HPやビオトープ通信、ビオトープ掲示板などで発信したり、専門機関の機関誌などにも掲載を依頼する。
・交流した学校や団体、個人に礼状を書き、可能な限り交流ができるようにする。

● 地域で実践するときの補足情報

  • 間伐体験をさせる場所が無い場合は、林野庁が設置する「遊々の森」の利用などを打診する方法もある。各地の森林組合にも相談できる。
  • 「森の健康診断」は、「矢作川水系森林ボランティア協議会」にスタッフの派遣を依頼して実施できる。「大人向け」「子供向け」の「出前講座」があり、全国どこからでも依頼できる。詳細はHPを参照されたい。
  • 干潟での生き物観察は、漁業協同組合が実施する「潮干狩り」に学習内容を加味するように依頼したり、日本野鳥の会や近隣の水族館に依頼したりする方法も考えられる。