エコシステム学習プログラム

このプログラムは、「青い地球の会ブルーアース」のプログラムを基にしています。

● プログラムの目標・身近な自然環境について学ぶことで、自分たちの身の回りに豊かな自然があることに気づく。また、そこに生息する生き物には「親子」「共生」「捕食ー被食」という様々な“つながり”があることを学び、生態系ピラミッドを作成することで「弱肉強食」「食物連鎖」を理解する。
・身近な自然環境(里山)での活動によって、多くの生き物が関わりながら生息していることを学び、「生態系」「生物多様性」を理解し、人間も生態系の一部であることを学び、自然への畏敬の思いや愛着心を持つようになる。
・グループワークやフィールドワークに積極的に参加し、自分の考えを発表するとともに、他の人の考えをしっかりと聞くことができる。
● プログラムの概要本プログラムは、自然と人間が共生する里山を題材として、生態系(エコシステム)について学び、持続可能な社会の構築について考え・行動する人づくりを目的としている。またESDの視点から、正解を求めるのではなく、豊かな発想を養い、自分の意見を述べ、他の人の意見を受け入れる力をつけることも目指している。
具体的には、地域の生き物カードを用いて、人間を含む生態系ピラミッドを作成し、自然の中のさまざまな関係性や生き物と人間のつながりについて学び、次に、実際に里山へ行き、多くの生き物が関わりながら生息していることを体験する。そして、里山での体験をもとに、生態系の一部である人間が他の生き物と自然の中で調和し、共生していくために大切なことを話し合い、考えたことや感じたことを子どもたち一人一人が、絵や文章等で表現する。
本プログラムにおいて、環境教育では重要な概念だが小学校中学年には難しい「生態系」「生物多様性」「食物連鎖」等について、身近な自然の観察を通して分かりやすく学習でき、環境問題が自分に関わる問題であることに気付くきっかけとなる。

● 学習指導要領との関連

学年教科・領域学習内容
小学校3〜4年総合的な学習の時間(5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。
小学校3年理科2 B 生命・地球
(1)身の回りの生物
身の回りの生物について,探したり育てたりする中で,それらの様子や周辺の環境,成長の過程や体のつくりに着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
イ 身の回りの生物の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,身の回りの生物と環境との関わり,昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし,表現すること。
小学校4年理科2 B 生命・地球
(2)季節と生物
身近な動物や植物について,探したり育てたりする中で,動物の活動や植物の成長と季節の変化に着目して,それらを関係付けて調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
イ 身近な動物や植物について追究する中で,既習の内容や生活経験を基に,季節ごとの動物の活動や植物の成長の変化について,根拠のある予想や仮説を発想し,表現すること。

● SDGsの要素

身近な自然環境から生物の関わり合いを学び,生態系や生物多様性について知る。
里山生態系についての話し合い活動やグループ活動で,他者の考えを尊重して受け入れる姿勢をもつ。

● ESDの要素

多くの生き物が互いに関わりながら生息していることに気づき,地域の生態系を理解する。
自然の中では,「親子」「共生」「捕食ー被食」などのさまざまなつながりがあることを知る。
身近な自然から,環境問題が自分に関わる問題であることに気づく。

● ESDの能力・態度

自分の意見を述べ,他の人の意見を受け入れる話し合い活動などを通じて,多様な考えに触れ,理解を深める。
地域の生き物カードを用いて人間を含む生態系ピラミッドを作成し,自然の中の関係性を学ぶ。
里山の生態系から人と自然が共生するうえでの課題を考えたり,自分のこととして内省したりする。

プログラム・単元・展開の流れ

12時間

活動、学習内容指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物)
1・2・3・4時間目里山生態系に人間が入り込むとその生態系はどうなるのだろう?
○野生動物の名前当てクイズをする。
○生き物カードを使って、生き物のつながり(関係性)ゲームをする。
「親子」「共生」「食うー食われる」(関係)という言葉を理解する。
○「弱肉強食」「食物連鎖」「生態系ピラミッド」という言葉を理解する。
○<里山の生き物カード>で里山の生態系ピラミッドを作成する。
○各自が里山の生態系ピラミッドを発表する。
○里山生態系について学ぶ。
○里山生態系に人間が入ったらどうなるのかについてグループで話し合い発表する。
◇地域の生き物に興味を向けるために、野生動物の名前当てでアイスブレイクを行う。
◇「親子」「共生」「食うー食われる」という言葉をしっかり説明し、印象付けるとともに、興味を示す映像や写真等を用意し説明する。
◇「弱肉強食」「食物連鎖」「生態系ピラミッド」という言葉とその意味について解説する。
◇生態系ピラミッドについて解説し「親子」「共生」「食うー食われる」関係等、つながりを理解しているか確認しながら里山の生態系ピラミッドを作成させる。
◇発表時にはOHP等を使用し、クラス全員が発表の内容を共有できるように準備しておく。
◇以下のことを伝える。
・人と自然環境とのこれまでの係わり
・里山生態系と人間との係わり
・人間が里山生態系に入るとどうなるのか
・バランスが崩れた里山生態系をどうするのか
◇人間が自然と共生することで優れた機能を維持している里山の風景や雑木林の写真等を用意しておく。
◇里山の再生について関心をもち、進んで提案する気持ちを持たせる。
◇白紙のカードに自分の似顔絵を描きそのカードを使うことで、課題を自分の事として捉えることができ、自然のバランスが崩れるリアリティー感を得ることができる。
◇他者の発表を批判したりせずに聞き、お互いの考えを受け入れるように指導する。
〔動物の映像や写真、生き物カード、里山写真、パワーポイントなど〕
5・6・7・8時間目 里山生態系って どんなところだろう?(フィールドワーク)

○インタープリターと近くの里山を散策しながら、里山生態系に関する知識や人と自然とのつながり(いろいろな関係)について学ぶ。
○各自が考えた里山生態系との違いを見つける。
○里山宝物さがしビンゴ(ワークシート)を行う。
○次の単元で発表や話し合いができるようにワークシートに記入させる。

◇インタープリターに、これまで学習してきた内容について申し送りし、里山散策の目的等を共有しておく。
◇「里山宝探しビンゴ」のワークシートについて、その内容をインタープリターと協議しておく。
◇「里山宝物さがしビンゴ」のワークシートに、以下の項目を入れる。
・驚いた事はなに?
・新発見したことはなに?
・人と自然が仲良くやっているところは?
・これは良くないと感じたところは?
〔屋外作業用の服装、ワークシート、画板、観察道具など〕
9・10・11・12時間目人と自然が共生するために、私たちに出来ることはなんだろう?(振り返り)
○グループで以下のことを話し合う。
・人間が里山生態系のなかでずっと一緒に暮らしていくためにはどうしたらよいか?
○グループで話し合ったことを発表する。
○人と自然との共生について自分事として考えるために、各自が思うものを作成する。
・絵を描く
・作文を書く
・切り紙、折り紙を貼る
・習字を書く など
◇ワークシートで出た子どもたちの発言を板書する。
◇他グループの発表から学んだことをカードに書く作業を行い、お互いの内容に興味を示すようにする。
◇発表内容を対比しながらメモを書くよう促したり、考えを深める質問をしたりする。
◇人の考えをグループで尊重して取り入れることができるように指導する。
◇「私が望む未来」について、子どもたちが自分なりの考えを表現できるようにする。
◇自ら考え行動するための決意や感想を、成果物として表現する。
〔ワークシート、画用紙、模造紙、サインペン、パワーポイントなど〕

その後の展開例等

里山生態系について学ぶ前に、山(森林生態系)、川(河川生態系)、干潟(干潟生態系)各々の生態系ピラミッドを作成することで、地域に生息する生き物について知り、そのつながり(関係性)について学ぶことができ、里山生態系への導入として役に立つ展開も可能。

地域で実践するときの補足情報

  • 生き物カードや里山散策時のワークシートは、各地域の生態系に合わせたオリジナリティあるものを作成し、それを授業で用いるのが望ましい。
  • フィールドワークは「里山」にこだわる必要はなく、学校の裏山や近くの田んぼなどでも十分に実施可能であり、インタープリターによっては校庭内や学校ビオトープでも実施できる。
  • 室内学習について、当会メンバーが学校へ出向いてファシリテーションをすることは可能である(詳細は別途打合せで対応)。また、フィールドワークのインタープリターについては、地域の自然環境に詳しい専門家やボランティアグループのほか、環境カウンセラーやスクールインタープリター等に依頼することにより対応可能である。
  • 指導や支援方法、ポイント等のファシリテーションについて詳しく解説したマニュアル、当会で企画・作製し全国で標準的に使用可能である生き物カード(山、川、干潟、里山の各生態系)は、配布可能である(詳細は別途打合せで対応)。