命の水
―開発途上国の子どもの問題を「水」を通して学ぶ―
このプログラムは、「あいち国際理解教育ステーション」のプログラムを基にしています。
プログラムの目標 | ①途上国の子どもの現状を体験から理解し、関心をもつ。 ②世界とのつながりに気づき、途上国の課題解決に参加するスキルと意欲をもつ。 ③参加型のグループ活動を通して、他者から学び、協力する力を身につける。 |
プログラムの概要 | 水を通して、開発途上国の子どもたちの現状を知り、世界の課題解決に参加する意欲をもつことをねらいとする。体験やグループでの話し合いを重視したワークショップ形式を中心にして進める。展開にあたっては、まず、人間が生きるために、最低限必要なものがあることをとらえ、それも不足している人がいることに気づくようにする。次に、開発途上国の子どもたちの水に関する現状を、「水運び」や「ORS(経口補水液)の作成・試飲」体験を通して知り、開発途上国の子どもを取り巻く水問題の解決策を考える。 さらに、そのために自分たちができることを調べて、その中から一つを選ぶ。単元の終末では、クラス単位でそれを実行に移すことができるようにする。 |
SDGsの要素
開発途上国の子どもたちが「水運び」により学校に行けないことを知り,解決策を考える。 | |
少量の水で顔を洗う体験や経口補水液を飲む経験から,水の重要性を理解する。 | |
水の問題に対して自分たちにできる支援の事例を調べ,行動する。 |
ESDの要素
開発途上国にある問題への理解を深め,課題解決に参加するスキルと意欲をもつ。 | |
世界には,生きるために必要な水が不足している地域があるという偏りのある現状に気づく。 |
プログラム・単元・展開の流れ
10時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 生きるために必要なものを知ろう | |
BHNsを知る 「無人島ゲーム」 BHNs…BasicHumanNeeds。生活するうえで必要最低限の物資や安全な飲み水、衛生設備、保健、教育などのこと。 | ○無人島に持っていくものを考えることで、人間が生きるために必要なものをつかめるようにする。 〔模造紙・コピー紙・ペン〕 | |
2時間目(1/4) | 世界の水事情について知ろう | |
アイスブレイク「国名集め」 | ○知っている国々に偏りがあることに気づけるようにする。 〔黒板など・ハンガーマップ(または世界地図)・マグネット・裏紙・太いペン〕 | |
2時間目(2/4) | ||
世界の水クイズ1 ・飲める水の割合や日本人が一日に使う水の量などをクイズ形式で考える。 ・クイズを通して、貴重な水を多く使っていることに気づく。 | クイズ1 地球にあるすべての水を2Lとすると私たちが利用できる水はどのくらい? [答え] ひとしずく クイズ2 日本に住んでいる人が一日に使う水の量は? [答え] 約300L クイズ3 ハンバーガー 1個を作るのに必要な水の量は? [答え] 1t 〔クイズシート〕 | |
2時間目(3/4) | ||
・水がないとどうなるのかを各グループでウェビング図にかき、共有する。 | ○グループでの話し合いをサポートし、多様な見方を促す。 水の大切さに気づけるようにする。 〔模造紙・マーカー〕 | |
2時間目(4/4) | ||
・子どもが水運びをしている写真や動画を見る。 | ○水運びは主に女の子の仕事で、何時間もかかるため、学校に行けない子どもいることを説明する。 | |
3時間目(1/2) | 途上国の水事情を体験してみよう | |
・1日に1家族が使う水をなるべく遠くまで運ぶ「水運び体験」をする。 | ○水運びの大変さを体験し、自分たちと異なる水環境にある子どもについて考えられるようにする。 〔バケツなど・水〕 | |
3時間目(2/2) | ||
・少量の水(200mL程度)で汚れた手や顔を洗う。 | ○少ない水で生活することの困難さに気づけるようにする。 〔水〕 | |
4時間目(1/2) | 世界の水問題について知ろう | |
世界の水クイズ2 ・医療、衛生、健康などに関するクイズを解きながら安全な水が入手できないことによって起きる問題に目を向ける。 | ○安全でない水が途上国の子どもにさまざまな悪影響を及ぼすことに気づけるようにする。 クイズ4 安全な水を手に入れることができない人は? [答え] 9人に1人 7億8000万人以上 ○汚れた水を利用する写真を見せる。 クイズ5 改善された衛生設備(トイレ)を利用できない人は? [答え] 25億人 クイズ6 一日に下痢が原因で死んでしまう子どもは何人? [答え] 約3000人 クイズ7 シエラレオネの平均寿命は? [答え] 47歳 ○医療や衛生に関する条件と設備などが不足している現状を説明する。 〔写真、クイズシート〕 | |
4時間目(2/2) | ||
ORSを作ってみよう ・各グループでORS(経口補水液)を作って飲んでみる。 | ○下痢で死に至らない簡単な方法であることを紹介する。 〔飲用に適した水500mL、砂糖5g、塩約1g、ペットボトル、コップ〕 ○ORS(経口補水液)を説明する。 | |
5時間目 | 水問題の解決策を話し合おう | |
・グループで話し合って解決カードの中から最も有効そうな解決策を選び、発表し・共有する。 | ○グループでの話し合いをサポートし、多様な見方を促す。 〔解決カード〕の例 ・トイレを作る ・井戸を掘る ・保健所を作る ・女の子が教育を受けられるようにする ・ORSを送る ・医者を派遣する 〔解決カード〕 | |
6・7時間目 | 自分にできることを調べよう | |
自分たちにできることを調べる。 ・「ライアンの井戸」の話など(子どもが世界に協力した話)を読む。 | ○日本でできる支援の中でどのような方法がよいか考えられるようにする。 ○本やインターネットで支援の事例などを調べるように促す。 | |
8時間目 | クラスでやることを決めよう | |
自分たちにできることを決める。 | ○自分たちができることを考え、クラスで話し合って一つに決めるように促す。 | |
9・10時間目 | 準備をしよう 実行しよう | |
自分たちで準備し実行する。 | ○決めたことを実行するために計画を立て、計画に従って、行動できるように支援する。 |
● その後の展開例等
・「アドボカシー活動」として、ポスターづくりや標語づくり、または、行政や企業に手紙を書くことなどが考えられる。
・途上国の子どもの生活や水事情にくわしい人(青年海外協力隊や出身の外国人など)を招いて話を聞いたり、インタビューをしたりする。
・生活発表会などで、学校の友達や下級生、地域の人々に向けて発表する。
● 地域で実践するときの補足情報
・全体を通して(特に1・2・4時限)、ファシリテーターが授業を進めることが望ましい。
○「あいち国際理解教育ステーション(AIS)」へファシリテーターの派遣を依頼できる。
交通費・滞在費などの実費が提供されれば、どこでも可能。講師料は別途。また、プログラム展開の相談にも応じる。
○国際理解教育のファシリテーター派遣を行っている団体などで代替可能。
○先生がファシリテーター役を担うことも可能。
・「ライアンの井戸」の内容、「できることリスト」、「解決カード」、クイズの詳細や数値の出典などは、メールでの問い合わせに応じて提供できる。〔あいち国際理解教育ステーション〕一部、ホームページでの公開を計画中。
・写真や動画・スライドショーなどはユニセフのホームページなどから入手できる。
・クイズなどの数値は、ユニセフなどが発表するデータを調べて使用している。実施にあたっては、最新データの確認を要する。