里山たんけん隊
● 目標 | ①里山における探検活動を通して自然環境の多様性を知ることにより、子どもたちの好奇心や探求心を育む。 ②里山の自然や歴史、生活文化等を学び、体験することによって自分たちでもできる保全活動への関心を拡げる。 ③環境NPOや市民団体、自治会等の協力の基に交流や協働作業を通してコミュニケーション力や共感力、地元の自然環境に親しむ意欲や態度を育む。 |
● 概要 | 探検活動を通して、多様な自然環境の認識、好奇心、探究する力を育むとともに、里山の自然、歴史、生活文化にも関心を広げる。また環境 NPO、市民団体、自治会等の協力を得て交流・協働することを通して、コミュニケーション力、共感力、地域の自然環境に親しむ意欲と態度を育む。具体的な活動として、①地域住民が講師となったり、里山に関するビデオを見たり、里山の自然や歴史、保全活動について学ぶ、②タブレット端末やデジタルカメラを活用し、里山を楽しみながら学習・探検し、③活動中は記録を行い里山探索の成果をまとめ、④探索に関わる地域住民や団体の方を対象にするなどの報告会を行う。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校3〜4年 | 理科 | 3年 2 B 生命・地球 (1)身の回りの生物 身の回りの生物について,探したり育てたりする中で,それらの様子や周辺の環境,成長の過程や体のつくりに着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (ア) 生物は,色,形,大きさなど,姿に違いがあること。また,周辺の環境と関わって生きていること。 4年 2 B 生命・地球 (2)季節と生物 身近な動物や植物について,探したり育てたりする中で,動物の活動や植物の成長と季節の変化に着目して,それらを関係付けて調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 イ 身近な動物や植物について追究する中で,既習の内容や生活経験を基に,季節ごとの動物の活動や植物の成長の変化について,根拠のある予想や仮説を発想し,表現すること。 |
小学校3〜4年 | 社会 | 3年 2 (4)市の様子の移り変わりについて,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 市や人々の生活の様子は,時間の経過に伴い,移り変わってきたことを理解すること。 (イ) 聞き取り調査をしたり地図などの資料で調べたりして,年表などにまとめること。 4年 2 (4)県内の伝統や文化,先人の働きについて,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 県内の文化財や年中行事は,地域の人々が受け継いできたことや,それらには地域の発展など人々の様々な願いが込められていることを理解すること。 (イ) 地域の発展に尽くした先人は,様々な苦心や努力により当時の生活の向上に貢献したことを理解すること。 |
小学校3〜4年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
里山の自然や歴史,生活文化等を学び,自然を多様な形で利用してきた人々の暮らしから将来の保全活動を考える。 | |
里山における探検活動を通して自然環境の多様性を知り,地元の自然環境に親しむ意欲をもつ。 |
● ESDの要素
里山の豊富な自然を観察し、その多様性を実感すると共に、その自然を多様な形で利用してきた 人々の暮らしに気づく。 | |
里山は、人が自然に働きかけて長年にわたって自然と共生してきたところであることを、里山の 自然と人の暮らしの跡を観察することによって学ぶ。 | |
行動計画をグループで立て、それに基づいて未知の場所を探検することにより、互いに連携協力 して問題を解決して行く態度を培う。 |
● ESDの能力・態度
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 里山理解と行動計画 | |
①里山の現状と変化を理解して、探検への意欲を高める[ビデオ] | ◇近辺の予め準備されたコースで、里山の自然に触れ、食べられる自然など、多様な自然が存在することを、楽しみながら学んでいく。 ◇ビデオを視聴し、里山の現状、昔と今の自然の変化について知る。また、実際の現場で里山保全を行う人々の話を聞く。そして、地域の課題を、自分事として認識し、それぞれが意見を持てるようになる。(数時間をかけて、里山の自然、生活や文化に関する事前調査を行う。また、昔の里山の様子を地域の人から聞くなどして、調査を深めることもできる。)〔ビデオ〕 | |
2・3時間目 | 里山理解と行動計画 | |
②里山探検の行動計画を話し合い決定する[地図づくり] | ◇ビデオ視聴後は、少人数のグループに分かれて、明日の探検のテーマとコースを決定する。〔地図(ジオラマ等があればなお良い)〕(例えば、何種類の花や蝶が見つけられるか、地域の人から昔の生活を聴くなどのテーマが考えられる)【未来】【伝達】【協力】 ◇また、「探検コースで発見したものを一つ発表すること」と課題を出し、探検中の子どもの自主性、積極性を促す。【関連】【参加】 ◇テーマと歩く距離・時間などを、総合的な観点から、グループで考えることが重要。【多面】【関連】 ◇タブレット端末の活用について、この時間で十分に指導し、慣れる必要がある。基本的には、地図の見方、GPSログの取り方、写真の撮り方である。〔GPS機能付きタブレット端末、デジタルカメラ〕 | |
4~9時間目 | 里山探検 | |
①地図を確認しながら、里山を探検する。 ②発見した動植物や印象に残った景色等をカメラで撮影する。 | ◇GPS機能付きタブレット端末を持って、里山を探検する。【伝達】【協力】 ◇タブレット端末には、予め対象の地図をダウンロードしておく。タブレット端末のGPSロガーでコースを確認する。〔GPS機能付きタブレット端末、デジタルカメラ〕 ◇テーマにそって行動し、発見した動植物、印象に残った景色等をカメラの機能で撮影して残す。【伝達】【参加】 ◇探検時は、子どもが、初めての経験や発見する物にチャレンジして何でもやってみられるように、子どもの自主性を尊重する。1グループにつき、1人の指導者が添うことが望ましいが、指導者は子どもの行動を尊重し、五感を活用するための声掛けにとどめ、多くを指示せず、グループの安全を見守ることを重視する。【伝達】【参加】 | |
10・11時間目 | まとめと発表 | |
①大きな地図に、歩いたコース、探検で発見した物の写真や感想、学んだことを記入してまとめる。 | ◇大きな紙の地図に、GPSロガーで活動時間や場所を確認する。歩いた経路を地図にマーカーで写し出し、撮影した写真を印刷して貼る。写真の傍には、探検中に感じたこと、気付いたことなどの情報を添え、グループ毎にオリジナルの地図を完成させる。〔地図、マーカー、プリンター、印刷用紙〕 | |
12時間目 | まとめと発表 | |
②作成した資料を活用して、成果発表を行う。 | ◇指導者、里山の関係者、保護者等を対象に、成果発表会を行う。グループで決めたテーマに基づき、作成した地図を使って発表する。また、子ども一人ひとりが探検時に発見したものを発表する。 ◇発表には、時間制限を設けて、内容を取捨選択させる。また、発表に向け練習を行う等により、発表の質を保証する。 ◇発表のポイントとしては、探検を通しての感想、発見したものを、自身の想いを交えながら発表することである。これらを通して、保護者・指導者は、改めて、子供の学びを真摯に受け止められるだけでなく、里山に係わる人達は、種々行ってきた活動の意義を再認識できる。 |
※なお、プログラムのモデル化に当たっては、「呉羽丘陵」を単に「里山」に修正するなどの工夫を行った。
● 地域で実践するときの補足情報
地域での実践を支えるのは、里山を保持している地域住民、里山を保全しようとする人々・団体との事前の交流・対話が必要となる。活動場所の選定や、どのような自然や歴史があるのかを、事前に調査し、学習プログラムに内容を盛り込むことで、学習の効果が促進される。また、学習日の当日は、各関係者・団体にも参加してもらい、現場の声や当事者の想いを直接聞くことで、里山の探検や発表等の学習が深化されると考える。