地球温暖化を学び学校の省エネを考える
「フィフティ・フィフティ」プロジェクト
このプログラムは、「特定非営利活動法人FoE Japan」のプログラムを基にしています。
● プログラムの目標 | 生徒たちが自分で考えるプロセスを通じ、地球温暖化問題の背景とメカニズム、エネルギー問題について学び、その解決策について、学校単位のエネルギー消費に落とし込んで学ぶことを目指す。身近なエネルギー利用について、具体的な数字とともに知ることで、実践的な省エネルギーの方法を提案し、自ら実施する力を育む。さらに、学校におけるエネルギー使用状況調査を通じて、データの収集・処理方法を学び、そこから得られた課題を分析しポスター等に表現する。学内に対する省エネ行動の啓発、および学校や自治体に対する報告・提案など、様々な形での発信・コミュニケーション方法を学ぶ。 |
● プログラムの概要 | もともとドイツで始まった「フィフティ・フィフティ」は、公立学校において、児童・生徒や教職員が協力して省エネ活動を行い、節減できた光熱水費のうち一定割合を、自治体から学校に還元するしくみ。省エネ教育を行いながら、自治体の経費を削減し、地球温暖化防止にも貢献する。プログラムでは、地球温暖化問題・エネルギー問題の背景とともに、具体的な省エネルギーの方法、改善点の発見、啓発ツールの作成、実施取り組み、効果・課題検証、成果発表と、省エネルギー実施の一連の具体的プロセスを、実際に実行しながら学ぶ。生徒が自ら考え、主体的に取組めるよう促すこと、方法や成果の「見える化」、自治体の環境政策との連携がポイント。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
中学校1~3年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の将来に関する課題などを踏まえて設定すること。 |
中学校3年 | 理科(第1分野)(第2分野) | 2 (7)科学技術と人間 ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 ㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用 自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,も続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。 2 (7)自然と人間 ア 日常生活や社会と関連付けながら,次のことを理解するとともに,自然環境を調べる観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (イ) 自然環境の保全と科学技術の利用 ㋐ 自然環境の保全と科学技術の利用 自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察することを通して,も続可能な社会をつくることが重要であることを認識すること。 |
● SDGsの要素
学校でのエネルギー消費を調査し,データの収集・処理方法を活用させて課題を解決する方法を考える。 | |
省エネルギーを進めるための啓発方法などの事例を知り,次世代の担い手として自治体に提案・報告する。 | |
世界的な地球温暖化の背景とメカニズムについて理解し,省エネルギーの方法や改善点を実行しながら学ぶ。 |
● ESDの要素
省エネルギーの成果を「見える化」し, 児童・生徒や教職員,さらに自治体の環境政策と連携して地球温暖化防止に取り組む。 | |
学校単位のエネルギー消費から,私たちが利用できるエネルギー資源は有限であることに気づく。 | |
身近なエネルギーの利用について,具体的な省エネルギーの方法を提案し,自ら実施する。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
11時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | 地球温暖化はなぜ起こるのだろう? | |
・地球温暖化のメカニズムを考える。 ・各国温室効果ガス排出 ・エネルギー開発・消費問題との関係を知る。 | ・実施する省エネ活動の背景・意味を知るための基礎を学ぶ。 ・必要に応じて映像を用いたり、外部講師(専門家、環境団体、地域の団体等)と連携する。 〔映像等(必要に応じ)〕 | |
2時間目 | 温室効果ガスを減らすにはどうしたらいいのだろう? | |
・温室効果ガスを出しているのは誰か | ・各国別の温室効果ガス排出量、日本国内での部門ごとの温室効果ガス排出量を知る。 ・家庭でのエネルギー消費、学校でのエネルギー消費がどこにつながっているか学ぶ。 ・削減の必要性や可能性を学ぶ。 〔書籍・資料等〕 | |
3時間目 | 毎日の生活でどの位のエネルギーを使っているのだろう? | |
・起きてから寝るまでに使用する電気機器についてリストアップする。 ・電気機器は3つの分野に分けると考え易いことを知る。 ・それぞれの消費電力と使用時間から、どれだけ電力を使っているか把握する。 | ・A照明・B空調・C一般電気機器の3種類の電力使用量を把握する。 ・A、Bに関しては、 <定格kW>×<年間運用時間h>×<稼働率> で机上計算する。 ・C(テレビ、PC、扇風機等)に関しては、コンセント型の消費電力測定器で電力使用量を目で見る。 〔消費電力測定器、身近な電化製品〕 | |
4時間目 | 具体的な省エネ方法を知ろう(1)(一般電気機器) | |
・機器は省エネ設定が出来ることを体得する。 | ・具体的な省エネの手法を体得させる。 ・テレビ、PCモニタの明るさ設定変更の効果を、消費電力測定器で見て省エネ手法を体得する。 〔消費電力測定器、TV、PC等の身近な電化製品〕 | |
5時間目 | 具体的な省エネ方法を知ろう(2)(照明) | |
・グループに分かれ、照明に関しての省エネ手法を挙げてみる。 ・グループごとに発表して共有する。 | ・窓側や不在時の消灯を実施する係を決める運用等。 ・照明スイッチ区分明示等。 ・白熱灯のLED置き換えができる場所はないか。 ・稼働時間を仮定して電力節減量を計算してみる。 | |
6時間目 | 具体的な省エネ方法を知ろう(3)(空調:熱負荷を減らす) (オプション:気流を利用して体感温度を調整する) | |
・空調には熱負荷そのものを減らす省エネがあることを知る。 ・窓を開けるルールと係を決める等のソフト面の重要性も知る。 ・皆で実験してみる。 | ・熱負荷を減らす:夏季は、すだれ、カーテン等の有無による輻射熱の違いを体感する。冬季は、窓のプチプチ断熱、校舎出入口の外気侵入防止対策等を工夫してみる。 ・エアコン使用時間を減らす:冷房するか窓を開けるかの判断ルールと係を決めると省エネできる。 〔デジタル温度計、すだれ、断熱素材、扇風機など〕 | |
7時間目 | 効果的に省エネを進めるためのしくみを知ろう | |
・省エネを進めるための啓発方法、経済的インセンティブのあり方について、事例を学ぶ。 ・学校での省エネを進めるために、応用方法を考える。 | ・「フィフティ・フィフティ」「ESCO事業」「報奨金制度」など、省エネを進めるための経済的インセンティブの事例について教える。 ・特に、自治体との連携により、双方にメリットのあるしくみづくりを具体的に考えさせる。 〔フィフティ・フィフティなど経済的インセンティブ制度の事例一覧〕 | |
8時間目 | 学校内での省エネ余地探し「電気どろぼうを探せ」 | |
・グループに分かれて校舎を回り、省エネ提案を考える。 ・グループごとに発表して共有する。 | ・これまで学んだことを元に、学校内を調査し、 A照明 B空調 C一般 電気機器の3分野ごとの省エネ提案をグループごとにまとめる。 | |
9時間目 | 省エネポスターを作ろう! | |
・ポイントをわかりやすくまとめる。 ・伝わるように配色や言葉を工夫する。 ・提案の中でできることを実行する。 | ・提案をポスターで表現する。 ・どうしたら伝えられるか、行動につながるかを意識させる。(PCで、または手描きで) ・提案だけでなく実行させる。 | |
10時間目 | 自治体に対する省エネ提案をまとめよう | |
・学校での省エネ推進に向け、自治体向けの具体的な提案をまとめる。 ・実行した成果を盛り込む。 | ・数ヶ月の実行期間を経た後、これまでの取組みをもとに、今後他の学校・自治体への参考となる事例や提案をまとめさせる。 | |
11時間目 | 学校の省エネ対策を発表しよう! | |
・校内報告会で提案を先生方や保護者、地域の方に聞いてもらい、可能であれば自治体に報告する。 | ・校内報告会を開き、作成した学内用ポスターや実行した成果とともに、発表する。 ・もしくは自治体の担当部署を訪問して報告する。 |
● その後の展開例等
- ワークショップや講演会の開催
エネルギー・環境問題に関して地域などで活動している市民団体や企業等と連携して、ソーラーパネルの組み立て、ソーラークッカーによる簡単な調理・実験、ミニ風車/水車づくりなどのワークショップ、講演会などを、関連講座として実施してもよい。 - ホームワークとして、家庭でのエネルギー使用についての調査・考察を加えてもよい。
- 自治体への提案、意見交換
「フィフティ・フィフティ」は、省エネによって削減された光熱水費の一部を学校に還元することでインセンティブとする制度である。一連の学習プログラムで得られた気づきや削減成果、ポスターなどによる学校内外への啓発の成果などについて、自治体(環境担当部署、教育委員会)と意見交換し、還元のあり方について提案・ディスカッションができれば望ましい。予算の還元以外にも、古くなった機器の交換の提案、エネルギー学習教材や機器の購入なども考えられる。自治体は、その取り組みや成果についてウェブサイトや広報誌などで公表することも考えられる。
● 地域で実践するときの補足情報
- 授業時数が足りない場合は、4~6時限目の内容を班ごとに分担するなどして、1~2時間に短縮することができます。
- 講演会の開催、ワークショップの開催、資料のまとめなどに関して、連携・協力が可能。
国際環境NGO FoE Japan