これからのエネルギー生活を考えよう
〜電気に頼りすぎた生活を見直そう〜
このプログラムは、「なごや環境サポーターネットワーク/三環の会(なごや環境塾三期生の会)」のプログラムを基にしています。
● 目標 | ①エネルギーの自給的な生活の事例と自分の生活を対比して、エネルギーに対する興味・関心をもつ(関心・意欲・態度) ②エネルギー源の枯渇や発電による廃棄物の問題から、地球に負荷をかけないエネルギーの利用・節約方法について多面的に考える。(思考・判断) ③電気の使い方や消費量、自然エネルギーの調査活動を主体的・批判的に行うことができる。(技能・表現) ④私たちの今後の生活とエネルギーの在り方を話し合い、より良い方法を考え、自分の生活を見直し実践につなげる。(応用・総合) |
● 概要 | エネルギーについて自給的な生活を行っている人々の姿を知ることや、自分たちの電気使用量を調べる活動・電化製品の歴史と電力使用量の増加の理由を考える活動を通して、自分たちがくらしの中でとても多くのエネルギーを使っていることを理解する。 そして、地球の資源に限りがある中で、自分たちはどのようにエネルギーを使った生活をするとよいかを考え、地球に負荷をかけない生活のあり方について批判的・多面的に考え、実践プランを立て、電気に頼りすぎた生活を見直す態度を養う。 |
● 学習指導要領との関連
学年 | 教科・領域 | 学習内容 |
小学校5年 | 社会 | 2 (3)我が国の工業生産について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のような知識及び技能を身に付けること。 (ア) 我が国では様々な工業生産が行われていることや,国土には工業の盛んな地域が広がっていること及び工業製品は国民生活の向上に重要な役割を果たしていることを理解すること。 (イ) 工業生産に関わる人々は,消費者の需要や社会の変化に対応し,優れた製品を生産するよう様々な工夫や努力をして,工業生産を支えていることを理解すること。 |
小学校6年 | 理科 | 2 A 物質・エネルギー (4)電気の利用 発電や蓄電,電気の変換について,電気の量や働きに着目して,それらを多面的に調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。 (ア) 電気は,つくりだしたり蓄えたりすることができること。 (イ) 電気は,光,音,熱,運動などに変換することができること。 (ウ) 身の回りには,電気の性質や働きを利用した道具があること。 |
小学校5〜6年 | 家庭 | 2 C 消費生活・環境 (2)環境に配慮した生活 ア 自分の生活と身近な環境との関わりや環境に配慮した物の使い方などについて理解すること。 イ 環境に配慮した生活について物の使い方などを考え,工夫すること。 |
小学校5〜6年 | 総合的な学習の時間 | (5)目標を実現するにふさわしい探究課題については,学校の実態に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること。 |
● SDGsの要素
電気の使い方や消費量の調査活動を主体的に行い,地球に負荷をかけないエネルギーの利用・節約方法について考える。 | |
発電による廃棄物の問題解決のため,循環型社会の仕組みの必要性を理解する。 |
● ESDの要素
エネルギー源の枯渇、発電による廃棄物の問題解決のために、地球に負荷をかけない循環型の仕組みの必要性を理解する。 | |
エネルギー源の枯渇問題、発電による廃棄物の問題を理解することで、エネルギーの有限性を学び、地球に負荷をかけない生活を目指す態度を培う。 | |
調査活動及び話し合い活動を通して、エネルギーに頼りすぎた生活を見直し、自分たちは地球の将来に責任があることを認識する。 |
● プログラム(単元・題材)の展開の流れ
12時間
活動、学習内容 | 指導、支援の方法、ポイント等(教材・必要物) | |
1時間目 | エネルギーの自給的な生活について知る | |
○「100ワットの生活」(電気に頼らない暮らし)の様子を知る。 ・最低限の電化製品は何か? ・自給的な生活スタイル 風呂(太陽熱温水器+薪でたく) 薪ストーブ(冬) 台所用の(プロパンガス→竈(かまど)へ) 予定ー天然の冷蔵庫(むろ) オンドル(床暖房)囲炉裏 石窯 沢水によるマイクロ水力発電 ○感想を話し合う | ◇最低限の電化製品(冷蔵庫、洗濯機、ノートパソコン、照明3つ)で暮らす人の姿から、エネルギー問題や生活の在り方に興味・関心を持たせる。 ◇100W(ワットは電力使用の単位であること)はテレビ1日数時間程度の電力消費量であると付け加える。 ◇愛知県豊田市旭地区の山間集落に移住し、古民家をリフォームして暮らす夫妻の生活を事例とする。(補足説明参照)地域で自給的な生活をしている例があればそれを取り上げても良い。 〔「100Wの生活」(※)の話やビデオ視聴〕 | |
2・3時間目 | 私たちの電気の消費量調べ | |
○家にある電化製品調べ | ◇コンセントで繋いで使うもの・充電して使うものを出させる。 ◇電気製品を出させた後、「なくてよいもの」「絶対必要なもの」を考えさせてもよい。 ◇どんな電気製品がどれくらいの電気量を使うのかの資料を準備しておく。 ◇調査活動を通して、豊かな暮らしのために多くのエネルギーを消費していることに気付かせる。 ◇電化製品調べについては事前に家庭で調べてきた物を持ち寄っても良い。 〔各家庭の1ヶ月の電気使用量と価格のわかる資料、電化製品調べカード〕 | |
4時間目 | 電力使用の生活の歴史(家庭部門) | |
○戦後の電力の使われた生活の歴史について知る。 ・電気がなかった時代はどのような生活をしていたのかを話し合う。 ・電化製品の移り変わりと電力使用量の推移を理解する。 ・電気使用量が増えたことによって私たちの生活がどのように変化したのかを、良い点・悪い点に整理して出し合う。 | ◇電気がなくても昔は生活できていたことを理解させる。 ◇三種の神器(注1)、3 C(注2)、デジタルの時代へと電気により生活が豊かになるとともに、使用量も増えたことに気付かせる。 ◇電気により便利になったことだけでなく、それによる問題点も出させる。 〔戦後の電力使用量の変化の資料〕〔三種の神器、3 C、デジタルの時代へと電化製品の変化の写真〕 | |
5・6時間目 | エネルギー源の種類と廃棄物 | |
○現在のエネルギー利用について理解する。 ・エネルギー源の種類(発電)を出し合う。 ・それぞれの発電による廃棄物にはどんなものがあるのかを整理し、人間や地球にどのような影響があるのかを考える。 ○廃棄物を出さない仕組みを考える。 ・自然エネルギーの利用 ・放射線の被害のない方法 ・廃棄物を出す仕組みと廃棄物を出さない仕組みを比較する。 | ◇エネルギー源の枯渇の問題、廃棄物の量を調べるとともに、両者を解決する方法について考えさせる。 〔エネルギー源の資料・発電による廃棄物の量の資料・現在のエネルギー利用の資料〕 ◇廃棄物を出さない方法を考えることから、脱原発の考え方があることに気付かせても良い。 ◇廃棄物の出ない自然エネルギーにも着目させる。 ◇東日本大震災・福島原発事故を参考に、電力が喪失した場合等、想定して考えさせても良い。 〔廃棄物を出す仕組み・廃棄物を出さない仕組みの資料〕 〔東日本大震災・福島原発事故の資料〕 | |
7~10時間目 | 施設の見学・体験 | |
○自然エネルギーでくらしを体験できる施設を見学・体験する。 ・自然エネルギーの種類とその使われ方 太陽光パネル(照明)、マイクロ水力発電(外灯)、薪ボイラー(温水・床暖房・風呂の湯)、薪ストーブ(暖房)、バイオマス(燃料)、家の基礎・床壁の構造(夏涼しく、冬暖かい工夫) | ◇自然エネルギー 100%の施設の見学・体験を行うことにより、自然エネルギーに興味・関心を持たせる。 ◇社会見学、校外学習で実施可能な場合、見学・体験で4時間(午前中)、または、2時間(午後)の場合が考えられる。 ◇実施可能でない地域は、近くの自然エネルギー施設及び電気系の施設(例、名古屋市科学館、電気の科学館等)を取り上げても良い。 〔豊田市里山くらし体験館すげの里の見学・体験活動〕 | |
11・12時間目 | これからのより良いエネルギー生活を考え、実践する | |
○今までの学習で学んだことを整理する。 ○グループごとに、エネルギーに関する実践計画を話し合い、模造紙にまとめる。 ・家庭・学校・地域等でできること ○実践計画に従って実践した内容について発表する。 ○家庭や学校で実践できることを、行っていく。 | ◇クラス全体で話し合いの中で、いろいろな考えを出させてもよい。 ◇同じ意見のグループ毎に話し合い、計画を立てさせてもよい。〔一斉の話し合い、グループ毎の話し合い等〕 ◇個別・グループ毎に実践した事柄を互いに評価し合わせる。〔個別の発表、グループ毎の発表、ポスターセッション等〕 |
(注1)白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫
(注2)カラーテレビ、クーラー、自動車
● その後の展開例等
- 校外学習等で自然エネルギー施設(すげの里)の見学が可能な地域(愛知県内、特に豊田、岡崎は可能)は、教科、総合的な学習の時間と関連させ、実際に見学すると良い。
また他地域でも、電気や自然エネルギーに関係する施設を利用することも考えられる。 - 授業後、話し合いで出された自分たちの考えた節電生活及び実践内容について、その後も家族、地域等でも話し合ったり、実践したりすると良い。また、発信できる場があれば自分たちの実践について社会に発信すると良い。
- エネルギー問題については、政府が発表した「エネルギー基本計画」(2014/4)について、新聞記事等を利用して、日本のエネルギー利用についての話し合いの場を広げる発展学習も考えられる。
● 地域で実践するときの補足情報
※ 補足説明「100W生活をしているIさんの紹介」
空き家になっていた古民家を借り、二人でこつこつ修繕しリフォームしている。裏は山になっており、うっそうとした森になっている。すぐ横には冷たく透き通った沢水が流れている。Iさんのお宅にある電気器具は照明が3つに、冷蔵庫、洗濯機、ノートパソコン以上である。お風呂は太陽熱温水器を利用し、足りない分は薪でたく。冬は薪ストーブで暖をとる。
台所の熱はプロパンガスを使っているけれども、これは循環型ではないし割高なので近々かまどに替える。今後、天然の冷蔵庫(むろ)やオンドル、囲炉裏、石窯などをこつこつと作っていき、沢水によるマイクロ水力発電にも取り組む予定だという。山からの清らかな水と薪、お日様からは熱をいただく暮らし、不便な暮らしというより衣食住に時間をかけ心をこめるていねいな暮らしというべきだろう。
(後述の「人は100Wで生きられる」より)
- すげの里(豊田市里山くらし体験館)見学・体験-自給自足による里山の暮らしを参考に、エコで自然に優しい循環型の くらしを意図して、薪ボイラーや薪ストーブ、太陽光発電などを導入している。
- 名古屋市環境局環境活動推進課環境サポーター担当では「名古屋市環境学習プログラムガイド」を発行し、名古屋市の幼 保小中等に環境学習及び環境活動の出前授業を行っている。その中に、2014年版「S 80 将来のエネルギーを考え てみよう」(三環の会作成)のプログラムが登録されている。
- 自給的なエネルギー生活について、参考文献として、「人は100Wで生きられる」(著者 名古屋大学環境学研究科准教授 高野雅夫氏)大和書房発行がある。